仙台市本庁舎はなぜ建て替える?完成予想図は?いつから?予算は?分かりやすく解説

2022.03.15

2017(平成29)年1月、仙台市は仙台市役所本庁舎の建て替えを行うことを決定した。新庁舎は2028年度に完成・供用開始予定となっている。

これに伴い、だてらぼ編集部では2021(令和3)年11月に行われた「仙台市本庁舎建替に関する市民説明会」を取材し、これまでの経緯や近隣住民の反応などについてまとめた。

【仙台市本庁舎】「建物の老朽化」と「庁舎の分散」を理由に建替へ

仙台市本庁舎

まず、仙台市役所本庁舎の建て替えについて経緯を振り返ってみよう。この件について市が本格的に着手したのは2016(平成28)年6月。市は本庁舎建替の大きな理由として、「建物の老朽化」と「庁舎の分散」を挙げている。

市によるととくに老朽化に関する課題については深刻な状況となっており、現在の本庁舎ができたのは1965(昭和40)年。完成から50年以上が経過している。コンクリート中性化試験において現在の本庁舎の建物の耐用限界を予測したところ、2029年から2030年で限界に至ることがわかったそうだ。

仙台市本庁舎の老朽化が確認できる画像

10年以内に建物としての限界が来るとのこと

当然、建て替え以外に「改修」も検討されたものの、長期的には建て替えが避けられないこと、改修後の供用可能期間が不明で不確実性を伴うこと、維持管理費の増加や分庁舎の改修費などが発生し、結果としてトータルで費用がかかりすぎることなどの理由から、「改修」ではなく建て替えが決定した。

また「庁舎の分散」についてだが、現在、仙台市が所有している庁舎は本庁舎のほかに北庁舎、国分町分庁舎、二日町分庁舎、錦町庁舎、上杉分庁舎の6棟がある。さらに民間のビルを5棟賃借している状況だ。これをひとつの庁舎にまとめることも本庁舎建替の理由のひとつとのこと。

現在の庁舎の配置はこのようになっている 【画像は仙台市HPより引用】

仙台市新庁舎の完成予想は?

仙台市新庁舎の建築概要は建築面積が約5,600㎡、延床面積が約60,000㎡。構造は鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造で低層部の一部を木造化することを検討している。階数は地下1階、地上15階。高さ約80m。

仙台市新庁舎の完成パース

仙台市庁舎の完成予定パース。かなり近代的な建物になりそう ※当日配布された資料より抜粋

仙台市新庁舎の予想パース図

こちらは勾当台通南東からのイメージ ※当日配布された資料より抜粋

配置する各機能として、高層部に議会機能、中層部~高層部に行政機能、中低層部に災害対策機能、低層部に市民利用・情報発信機能を配置する計画を示した。

仙台市民にとって気になるのは低層部 ※当日配布された資料より抜粋

設計コンセプトとして大きな目玉となるのが、一番町商店街からの軸線を庁舎敷地内に引き込む点。建物の南側にある勾当台公園市民広場との連続性に配慮した運用を検討しているという。

※当日配布された資料より抜粋

現状、一番町商店街から市民広場、本庁舎と一本の道路でつながってはいるものの、それぞれが分断されていて“連続性”は乏しい印象を受ける。今後、新庁舎低層部、敷地内広場、勾当台公園市民広場の一体的利活用に向け、民間活力の導入によって多様な市民活動が行われることを目指すとのこと。

一番町商店街から本庁舎を撮影

なお仙台市によると、想定している整備費用は約453~473億円。市庁舎整備基金を活用するとともに、市債(国や金融機関からの借入金)の発行などにより必要な財源を確保する予定だとしている。

仙台市新庁舎のキーワードは「チャレンジ」

編集部が参加した「仙台市本庁舎建替に関する市民説明会」では、市の職員から本庁舎建替基本設計中間案についての説明や、新庁舎低層部の公民連携検討会での議論についての説明、参加した市民からの質疑応答などが行われた。

「仙台市役所新本庁舎 低層部等公民連携検討会 座長」の馬場正尊(ばば・まさたか)氏は冒頭、「市庁舎が市民が手続きに訪れる機能的な場所であった時代から、仙台の未来を指し示すような新しい価値を生む場所へ生まれ変わることにチャレンジする。これが基本計画段階でのキーワードです」と話した。

「公と民が連携して市民との交流を促進する、新しい市庁舎を目指す。日本でも新しい試みです」と馬場氏

この「チャレンジ」というキーワードをもとに現在、検討会のなかで低層部の2つの大きな方向性が語られているという。1つは「都市に新しい価値を生むための市庁舎」、もう1つが「市民に開かれた市庁舎」だ。

これを踏まえ、より具体的な3つの機能として「リビングラボ」「クロスメディアラボ」「ポリシーラボ」を挙げていた。簡単に説明するとこういうことだ。

「リビングラボ」はくつろぎ、憩いの場をイメージした空間。「クロスメディアラボ」は情報発信やコミュニケーションが活発に行われる空間。「ポリシーラボ」は市の政策を市民に伝達したりディスカッションしたりできる空間だ。

このように、新庁舎の低層部が市民にとってより多様な活動が可能な場所になるよう、「ハードと並行しつつソフトも考え、箱だけでない中身のしっかりある施設にしていこう」と議論を進めているところだという。

仙台市本庁舎建替に対する仙台市民の意見

この日行われた「仙台市本庁舎建替に関する市民説明会」には約35人の仙台市民が参加していた。また当日会場に来られない人向けに説明会の様子をライブ配信しており、こちらは筆者が確認した時点で20人ほどが視聴しているようだった。

説明会のなかで挙げられた声には、以下のようなものがあった。

◎今回の工事にあたり、環境面への影響はどうなのか。また結果について、近隣住民への説明の場を設けてくれるのか。

→ビル風や日陰など、周辺環境への影響については現在調査を進めている。説明できるタイミングになれば、町内会など周辺住民に説明する機会があると思う。

◎新庁舎の正面は東側になるのか。一番町商店街からの軸線を整備し、市民広場との一体的な利活用を進めるのであれば、今まで通り南側の方がふさわしいのでは?

現在の仙台市本庁舎の正面は南側だ

→正面は東側で検討している。しかし建物の「顔」がどちらを向いているかは非常に重要だと考えており、東面も南面も両方「顔」になるような建物の設計を考えているところ。

◎(一番町商店街からの一体的利活用において)新庁舎の敷地と勾当台公園市民広場の間に表小路線(道路)が走っているが、これをどうするつもりなのか。

本庁舎と勾当台公園市民広場の間を通る表小路線

→廃道にすればより一体的に活用できるようになるが、平時はかなり車が走っており交通量が多い。例えば土日やイベント開催時などは道路を封鎖して一体的な使い方ができるのではないか、と検討している。

◎市民の意見がどう反映されるのか、その開示プロセスはどうなっている?

→基本設計が完了したら改めて市民説明会の開催を予定しており、その際に報告させていただく。

今後も引き続き仙台市本庁舎建替の動向を見守る

説明会で馬場氏はこのようにも述べた。

「想像してみてください。市役所の前で日常的に子どもが遊び、居心地の良いカフェで市民がゆったりとティータイムを過ごす。休日にはマルシェが開かれて賑わう様子を。そのように日常的に利用しているからこそ、有事の際にはすぐ仙台市本庁舎を訪れることができる。市役所の低層部が、市民にとって新しい活動の拠点になるよう検討しているところです」

質疑応答の場面でも、新しい市役所が市民にとってより親しみやすく、利用しやすい場所になってほしいという期待値の高さがうかがえた。

仙台市によると、本庁舎建替えについては今後も随時説明会などを行っていくとのこと。だてらぼでは引き続き、今後の動向を見守りたい。

この記事を書いた人

岩崎尚美

岩崎尚美

仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!

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