ピーク時は3ヶ月待ち!『霜ばしら』ってどんなお菓子?九重本舗玉澤に聞いてきた
2020.12.01
「萩の月」に「喜久福」に「支倉焼」に——。
どれも宮城県が誇る人気の銘菓だが、秋になるとSNSを中心に「舌に乗せた瞬間に溶けた」「繊細すぎる」などと話題になる銘菓がある。毎年10月から4月まで期間限定で販売される、九重本舗玉澤の「霜ばしら」だ。
寒さが増す冬の時期を迎えると予約が殺到するほどの人気で、最長で3ヶ月待ちになることもある。
なぜ、人はここまで「霜ばしら」にとりこになるのか。商品の特徴やこだわり、人気のきっかけなどを「九重本舗玉澤」に聞いた。
「九重本舗玉澤」にレッツゴー
取材をした日は、霜ばしらの販売がすでにスタートしている10月某日。「九重本舗玉澤」の本社を訪れる前に、仙台駅で霜ばしらが売っているか確認してみると……
買えた。「霜ばしら」を片手に、太白区郡山にある九重本舗玉澤の扉を叩く。
出迎えてくれたのは、九重本舗玉澤の近江貴生(おおみ・たかお)代表取締役と管理部の近江剛史(おおみ・つよし)専務のおふたり。
近江貴生14代目(左)と近江剛史専務(右)
「霜ばしら」は最長3ヶ月待ち
——霜ばしら、毎年SNSで話題になりますね。
そうですね。おかげさまでSNSによって認知度が上がりました。ありがたい限りです。
——買えないと思ったら、さっき仙台駅で買えたのでラッキーでした。
10月や11月は比較的買えるんです。「霜ばしら」というだけあって季節感のあるお菓子なので、12月以降になると1ヶ月、最長で3ヶ月ほどお待ちいただくこともあります。
いま購入すると、自宅に届くのは2021年1月15日以降
——3ヶ月とはかなり人気ですね。いつまで販売しているんですか。
一応、4月末とはしていますが、在庫が残っていれば例年GWくらいまで販売しています。
「霜ばしら」ってどんなお菓子?
——「霜ばしら」はいつから販売している商品なんですか。
もう40年以上も前になります。さらに古くから販売している「晒よし飴(さらしよしあめ)」という商品がございます。この「晒よし飴」をより現代風にアレンジしたものが「霜ばしら」なんです。
「晒よし飴(2592円〜/税込、以下同)」 【画像提供:九重本舗玉澤】
——見た目は「霜ばしら」と似ていますね。
はい。見た目は似ていますが、「霜ばしら」は口どけを楽しむお菓子。「晒よし飴」は口どけよりもしっかりとした飴の感じを楽しむお菓子になっています。「晒よし飴」も非常にファンの多い商品で、「霜ばしら」と同じく冬季限定の飴菓子です。それぞれ特徴が少し異なりますので、ぜひ食べ比べて違いを楽しんでいただけるとうれしいです。
こちらは霜ばしら
——舌の上に乗せた瞬間に溶けてなくなる感じは「霜ばしら」だけってことですね。
そうですね。口どけにこだわってるので、10月から4月の寒い時期にしか作れないんです。
——どうして作れないんですか。
5月くらいからだんだん湿度が上がりますよね。「霜ばしら」はとても繊細なので、湿気や暑さで溶けてしまうんです。
──そういった理由があったんですね。1つひとつ手づくりしてるとお聞きしています。
おっしゃる通りです。この道20年の熟練の菓子職人が全行程を手づくりしています。缶の中に詰める職人もいて、箸を使って1本ずつ詰めてるんです。
──箸を使って(!?)。それはかなり手間がかかりますね。
そうなんです。なので、1日に製造できる数には限りがあるんです。細かいことはお伝えできませんが、霜ばしらには製造上の厳しい基準があって、それをクリアしないと作れません。販売期間の10月から4月でも、たとえば暑くて湿度が高い日や風が強い日などは製造できないんです。
──最近は異常気象も珍しくないですからね。
はい。以前よりも作れる日が年々減っている状態です。
「霜ばしら」ってどうやって食べるのが正解なの?
——霜ばしらの正しい食べ方ってあるんですか。
スタンダードな食べ方として、まずはふたの裏にまわりの白い粉をある程度移していただきます。
白い粉をふたに移す
すると、1本だけぴょーんって霜ばしらが出てますので、最初にそれをつまんでお召し上がりいただく感じです。
真ん中にあるひとつだけ上に飛び出している
——どうして1本だけ飛び出てるんですか。
霜ばしらが隙間なく入っているので、全部フラットになっていると取りにくいんですよ。
隙間が生まれて取り出しやすくなった
——1本取れば、隙間ができてそのあとも取りやすくなる、と。
そうですね。食べたらまた白い粉を缶の中に戻していただきます。
——捨てずに戻すんですね。
はい。この白い粉は「らくがん粉」といって、もち米を粉状にしたものなんです。霜ばしらを湿気と衝撃から守るために入れています。
霜ばしらの品質を保つのに重要な役割を果たす
——そういう役割があったんですね。
あとはビジュアル的な役割もあって。白い粉を雪に見立てて、雪をかき分けたら中に霜ばしらがある、みたいなイメージですね。
——なるほど。開封したら、どれくらいで食べるって目安はありますか。
日にちの目安はとくにないんですが、開封後は湿気や暑さから保護するためにも、冷蔵庫に入れて保管しておくのをおすすめしています。
2020年にパッケージをリニューアル
──今年からパッケージが新しくなったそうですね。
はい。缶は従来のモデルなんですが、パッケージをリニューアルしました。
——これまでも定期的に変わってたんですか。
いえ、ここまで大々的に変わったのは、霜ばしらの40年の歴史のなかでもはじめてです。
霜ばしらをイメージさせるデザイン
霜ばしらの手作り感が出ているだけでなく、繊維が不規則に出ている感じなど、霜ばしらのイメージを忠実にデザインに落とし込めました。とても気に入っています。
——値段も2020年から変わりましたね。
はい。去年までは2160円でしたが、今年からは2916円になりました。
——700円くらい高くなってるんですね。
そうですね。材料費の高騰はもちろん、製造できる数が年々減っているなどの理由もございまして、やむを得ず値上げさせていただきました。
「霜ばしら」はネットでも注文できる
——「霜ばしら」ってどこで売ってるんですか。
まずは、太白区郡山にあるこちらの本社工場でご購入いただけます。
——オフィス機能だけだと思ったら、本社でも買えるんですね。
在庫があればですけど販売もしておりますよ。あと仙台駅だと地下にある「九重本舗玉澤エスパル店」でお買い求めいただけます。そのほかにも、数量は限定でございますが2階の西側と3階の新幹線口にある「おみやげ処せんだい」、2階にあるエスパル東館の「東北めぐり いろといろ」でも販売しております。
——仙台駅でも結構買えるんですね。
はい。藤崎百貨店の地下1階にも私どもの直営店「九重本舗玉澤 藤崎店」がございます。直営は本社工場とエスパル、藤崎の3ヶ所ですね。あとは、仙台空港などでもご購入いただけます。
運が良ければ、アーケードにある「地産地消市場 仙臺いろは」でも買えるそう
——でも、買えたらラッキーですよね。
そうですね。タイミングにもよりますが、2019年は11月には店舗ではすでに予約対応でした。楽しみにしていただいているお客さまには大変申し訳ないのですが、やはり一つひとつが手作りで、品質にこだわって作っておりますので、どうしても品切れになってしまうことをご理解いただけますと幸いです。
——タイミングですね。そういえば、オンライン販売もはじめましたね。
はい。今年の春にオンラインショップを立ち上げました。これまでも通販は実施していたんですが、電話やファクスでのご対応だったんです。
——利便性が上がって、全国から注文できちゃいますね。
そうですね。ただ、できるだけ対面販売を優先しています。仙台にわざわざお越しいただいてご購入いただく方には、なるべく優先的にお出ししたいと考えております。
——より早くゲットしたい場合は、各店舗や本社工場で買うのが良いってことですか。
はい、そうなります。オンラインショップだと最長で3ヶ月待ちなどになるんですが、店舗での対面でしたらそこまで長くお待ちいただかなくてもお買い上げいただけます。ただ、仙台に来るのが難しい場合は、オンラインショップでご購入いただければ幸いです。
賞味期限は長く、およそ半年ほど
霜ばしら以外にも銘菓が盛りだくさん
「九重本舗玉澤」が創業したのは1675年【画像提供:九重本舗玉澤】
——霜ばしら以外の代表銘菓を教えてください。
屋号にもあります「九重」というお菓子は、明治時代から販売しております。
「九重(10本入1620円)」
霜ばしらが人気ではありますが、じつは「九重」が玉澤のメイン商品という位置付けなんです。
九重は通年商品
——メインなんですね。ツブツブしてますが、どういうお菓子なんですか。
砂糖がコーティングされていて、イメージ的には金平糖に近いかもしれないですね。ゆず、ぶどう、ひき茶と3種類あって。お湯に入れて溶かして飲むのがベーシックな召し上がり方になります。
ほのかな香りもグッド
——色鮮やかで見た目も美しいですね。
そうですね。ハイボールやスパークリングワインに入れるのもおすすめです。とくに今は「九重ハイボール」をたくさんの方に知っていただこうと活動をしております。見た目がきれいなだけでなく、おいしいですよ!
視覚的にも楽しめる九重ハイボール 【画像提供:九重本舗玉澤】
「九重ハイボール」のPR活動も実施している 【画像提供:九重本舗玉澤】
——ほのかに香ってよりおいしくなりそうです。
はい。あとはアイスクリームにトッピングしたり、ヨーグルトに入れたりするときれいで、最近は「SNS映えする」などとも言っていただいております。
——確かにインスタ映えしそうです。私は玉澤のゆべしが好きなんですよ〜。
ありがとうございます。ゆべしは全国で売っているお菓子なんですが、九重本舗玉澤では、くるみを使ったしょうゆ味のゆべしを作っています。
「ゆべし(562円/箱詰5個入)」
——ゆべしって宮城県だけだと思ってました。
いえいえ、全国で売っていて。同じゆべしでも、ごま味やみそ味、そしてゆずが入っているゆべしもあるんですよ。
——そうなんですね。もう1個ぐらい代表銘菓を教えてください。
「しおがま(648円」 【画像提供:九重本舗玉澤】
——見た目はらくがんっぽいですね。
そうですね。もち米を蒸したものを押し固めたお菓子で、あんこが入っている「あん入りしおがま」もあります。
「あん入りしおがま(箱詰2本入1620円)」【画像提供:九重本舗玉澤】
——あん入りもおいしそうですね!
しおがま自体はそこまで甘くないので、甘いものが好きな方は「あん入りしおがま」をお選びいただくことが多いですね。
霜ばしらは唯一無二のお菓子
宮城県民はもちろん、全国にもファンが多い「霜ばしら」。
ゲットできるのは10月〜4月で、時期によっては3ヶ月待ちになることも珍しくない人気の銘菓だ。
オンラインショップでも販売しているので、この機会にゲットして唯一無二の食感を体験してみてはいかがだろうか。
\この記事も読まれてます/
この記事を書いた人
幸谷亮
仙台が大好きすぎて「だてらぼ」を立ち上げたひと。雑誌編集部→雑誌編集部→2016年に独立。雑誌編集部時代に身につけた取材力を武器に、みなさんの気になるネタを全容解明します。
関連記事