仙台グルメといったら欠かせない!老舗立ち食いそば「そばの神田」人気の秘訣に迫る

2022.07.25

言わずと知れた仙台のソウルフード「そばの神田」の立ち食いそば。忙しいビジネスパーソンはもちろん、食べ盛りの学生、女性に家族連れと、創業から50年以上経った今でも、さまざまなお客から愛され続けている。

だてらぼでは、なぜ「そばの神田」がこんなにも多くの人に愛され続けるのか、その秘密を探ってみた。

2種類の「そばの神田」宮城県内に7店舗を展開

仙台で人気の立ち食いそば店

そばの神田 駅前南町通り店

2022(令和4)年7月現在、宮城県内に「そばの神田」は全部で7店舗。内訳は、昔ながらの立ち食いスタイルの「東一屋」が5店舗、ロードサイド型で椅子席・カウンター席のみの「町前屋」が2店舗となっている。

今回は、「東一屋」のなかでもっとも新しく、2018(平成30)年に移転した「駅前南町通り店」を取材。店長の笠原裕也(かさはら・ゆうや)さんと、「そばの神田」を運営するかんだ商事有限会社の広報担当・小笠原雅子(おがさわら・まさこ)さんにお話を伺った。

そばの神田の男性店長

お店のスタッフと一緒に映る笠原店長(左)、本日はよろしくお願いします!

高校生の頃からそばの神田ファンだと言う笠原店長。当時は、1日2回ペースで毎日のようにそばの神田に足を運んでいたそう。そばの神田愛が高じて入社して14年目、今や店長にまでなってしまったという筋金入りだ。

まずは、そんな笠原店長にそばの神田の蕎麦のおいしさの秘密と、人気メニューなどについてインタビュー。後半部分では、広報担当の小笠原さんにそばの神田のルーツについて聞いた。

「そばの神田」のおいしさの秘訣は自社工場でつくる蕎麦と出汁!

そばの神田のスタッフ

――仙台のソウルフードとして親しまれている「そばの神田」ですが、ズバリ人気の秘訣は?

笠原店長
笠原店長
そばの神田オリジナルの蕎麦粉を使い、毎朝自社工場で製麺しています。朝早く店舗に届けられた、打ちたての蕎麦を提供できるのがおいしさの秘訣です。自社工場を持っている立ち食いそば店は少ないと思います。

――自社で製麺している立ち食いそば店なんて聞いたことありません。「そばの神田」のそばの特徴は?

笠原店長
笠原店長
蕎麦粉の香りを強く感じられるようオリジナルでブレンドしているほか、通称「ホシ」と呼ばれる黒い粒がそばのなかに入っているのも特徴です。材料は蕎麦粉とつなぎの小麦粉、あとは水だけで、添加物は一切入っていません。

――蕎麦の味を決めるのに欠かせない出汁についてはどうでしょうか?

笠原店長
笠原店長
鹿児島県枕崎産のかつお節とさば節を使用し、削っています。その削りたてのものを使って毎朝工場で出汁を取っているので新鮮で香りが高く、味にも深みがあります。食べた人の舌をうならせるおいしさですよ。
そばの神田の揚げ玉

あげ玉は無料で入れ放題!

笠原店長
笠原店長
天かすではなく、あげ玉としてちゃんと作っているのもおいしさの秘訣です。かけそばなどあっさりとしたそばを頼んで、「ちょっと味が足りないな」ってときにあげ玉を足すお客さまが多い印象です。
そばの神田の蕎麦湯

2時間に1度は取り替え、冬でも新鮮で温かい蕎麦湯が飲めるよう心がけているそう

笠原店長
笠原店長
蕎麦湯は、ざるそばを頼んで最後につゆを割って飲むほかに、白湯として飲むお客さまも多くいらっしゃいます。ざるそばがよく出る夏場だと、結構すぐになくなっちゃうこともあります。

――「そばの神田」は天ぷらがサクサクでおいしいんですよね。種類も多いので迷ってしまいます。

笠原店長
笠原店長
できるだけ揚げたてのおいしい天ぷらを提供したいと考えているので、揚げ置きはあまりしません。減ってきたらすばやく足せるような体制を整えています。また雨の日など湿度の高い日でも天ぷらがしなっとしづらい独自の製法で揚げているので、梅雨時期でもおいしい天ぷらを提供できるんです。
仙台の人気立ち食い蕎麦屋の添付ら

サクサクの天ぷらは、お店で食べる醍醐味のひとつ

――味を追求すればするほど、提供するのに時間がかかってしまうイメージがあります。でも「そばの神田」は提供スピードも速いですよね。

笠原店長
笠原店長
お客さまが注文したら、すぐに麺を茹でられる状態を常にキープしています。いつでも茹でたての新鮮な蕎麦が食べられるよう、作業スタイルが確立されているんです。落ち着いている時間帯なら注文を受けてから2分以内、混んでいるときでも5分程度でご提供できるようにしています。
そばの神田の厨房で調理をする男性店長

「やすい、はやい、おいしいが『そばの神田』のモットーです」と笠原店長

天ぷらを乗せる動作にも無駄は一切なし

――忙しいときや時間のないときでもサッと食べられて、しかもおいしい。だからこそ、そばの神田は仙台のソウルフードとして愛されているんですね!

「そばの神田」人気メニューは?定番ものから期待の新星まで

そばの神田のおすすめメニュー

――メニューがかなりたくさんありますが、今は何種類ありますか?

笠原店長
笠原店長
そば・うどんだけで44種類です。このほかにトッピングなども選べます。
そばの神田のメニュー表

入口脇の券売機でメニューを選び……

そばの神田のオーダー方法

カウンターに「そば」か「うどん」かを伝えつつ券を出せば注文完了!

――「駅前南町通り店」の人気メニュートップ3を教えてください。

笠原店長
笠原店長
一番人気で、かつ定番なのが「野菜かき揚そば(430円/税込、以下同)」です。かき揚には人参、玉ねぎ、水菜が入っていて、人参がとにかく甘くて絶品です。これにトッピングで温玉を乗せるお客さまが多くいらっしゃいます。かき揚をサクッと食べた後に、後半は温玉の黄身を割ってとろりと食べる。相性バツグンです。
そばの神田の人気ナンバーワンメニュー

開店以来不動の人気を誇る、「そばの神田」の定番メニュー 【画像提供:そばの神田】

――聞いているだけでよだれが……

笠原店長
笠原店長
次に人気なのが「紅しょうが天そば(430円)」です。これは2021(令和3)年5月に新登場した新メニューなのですが、今まで「野菜かき揚」派だったお客さまが乗り換えるほどの人気メニューになりました。
そばの神田の紅生姜天ぷら蕎麦

発売開始以降、人気が急上昇中

――名前の通り、紅しょうがの天ぷらがどどんと乗っていますね! でもこんなに豪快に乗っていると、しょっぱいのでは……?

笠原店長
笠原店長
そのように心配されるお客さまもいらっしゃいますが、温かいそばでも冷たいそばでもちょうどいい、おいしく食べられる味に調整しているので大丈夫です! 商品化前には6~7のメーカーから紅しょうがを取り寄せて、「これはしょっぱすぎる」「こっちは味がしない」なんて試行錯誤を繰り返した結果、完成した自信作なんですよ。
そばの神田のおすすめメニュー

お好みで七味や一味を足すとより辛く、トッピングの大根おろしを入れるとマイルドになって食べやすくなる。お試しあれ!

――紅しょうがの赤色がよく映えて、見た目にもきれいですね!

笠原店長
笠原店長
はい。多くのお客さまがSNSにアップしてくださっています。あと人気なのは、開店する朝7時から11時までの限定メニューの「朝そば」です。かけそばに温玉とほうれん草が乗って360円のお得なメニューになります。朝の通勤前に食べていくお客さまが多く、開店前の段階で10人くらい並ばれていることもありますよ。
そばの神田のモーニングメニュー

朝来店するお客のほとんどが「朝そば」を注文するそう

――人気メニューとは別に、笠原さんイチオシのメニューはありますか?

笠原店長
笠原店長
意外なところだと、「カレーそば(420円)」に「とろろ」のトッピングがおすすめです。カレーのガツンとした味わいにとろろが加わることで味にまるみが出て、マイルドになります。そばにカレーととろろがよく絡んで、麺が包まれる感じがもうたまらなくおいしい。スタッフ間ではまかないとしてもかなり人気なので、一度試してみてほしいですね。

――気になります! とろろは最初からかけちゃう?

笠原店長
笠原店長
トッピングのとろろは「あいがけ」の状態で提供しているので、最初にカレーだけで食べて、後からとろろと混ぜながら食べると味変して楽しめます。注文時にお声がけいただければ、お好みでとろろを別盛りにすることも可能です。
そばの神田のスタッフ人気メニュー

カレーととろろは、それほど注文率が高くない組み合わせだそう。そばの神田通なら一度試してみたい

女性や家族連れも多く来店する、みんなに愛される立ち食いそば

――「駅前南町通り店」にはカウンター(椅子)席があるので、他の店舗よりも女性客が多い印象があります。

笠原店長
笠原店長
男性6割、女性4割ほどでしょうか。ここ最近は女性のお客さまが増えました。女子中学生や高校生が学校帰りに食べる姿も見られるようになりましたね。

――女子中学生! 年齢層的にはかなり幅広い人が来店するんですね。

笠原店長
笠原店長
そうですね。スーツを着たビジネスパーソンから工事現場関係のお客さま、学生さんのほか、休日になると家族連れも見えます。10年以上もそばの神田ファンだという年配のお客さまもいらっしゃいますよ。
そばの神田の店長

「たくさんのお客さまが食べに来てくださってうれしいです」と笠原店長。全身からそばの神田愛が溢れている

――とくに混む時間帯は?

笠原店長
笠原店長
お昼と、17~19時くらいはやっぱり混みますね。週末だと飲み帰りのお客さまが“シメそば”を食べていかれるので、終電前の22~23時くらいも混雑します。

仙台の立ち食いそばの先駆け!長い歴史のなかでは大きな転換期も

仙台の人気の立ち食い蕎麦

そばの神田 東一屋 サンモール店

ここからは「そばの神田」のルーツについて、広報担当の小笠原さんに伺った。

――「そばの神田」は創業から50年以上経つ老舗ですが、当時仙台に立ち食いそば店はあったのでしょうか?

小笠原さん
小笠原さん
駅構内でなく路面にある立ち食いそば店は、他にはなかったと聞いています。

――仙台の立ち食いそば店の先駆けだったんですね。

小笠原さん
小笠原さん
もともとは、創業者である先代が東京の御茶ノ水で立ち食いそば店を経営していたのが始まりです。当時は東京でも立ち食いそばは珍しかったみたいで、どこか他の土地でも店を出したいと考えた結果、宮城県の塩釜市に1号店となる「そばの神田」を出店しました(現在は移転により閉店)。それが1969(昭和44)年のことです。
多賀城にあるそばの神田

2018(平成30)年に多賀城市にオープンした町前屋本店 【画像提供:そばの神田】

――それからずっと順調に店舗展開を続けてきた?

小笠原さん
小笠原さん
そうですね。現在は東一屋と町前屋をあわせて7店舗で、店舗数は過去最多になっています。ただ、50年の歴史のなかには、大きな転換期もあったんです。

――それはどのような?

小笠原さん
小笠原さん
弊社社長が代替わりした後、2004(平成16)年に、提供するそばをゆで麺から自家製麺の生そばに変更しました。その後、2005(平成17)年に自社工場を新設しています。

――それまでにも順調に人気を伸ばしてきたにもかかわらず、なぜあえてそのような大きな転換を?

小笠原さん
小笠原さん
ゆで麺はメーカーで作られたものですが、自家製麺にすれば味の調合はすべて自社でできるようになります。そのほうがよりおいしいものができる、というのが大きな理由です。また、自家製にすることでコストが抑えられるメリットもありました。

――ゆで麺と生そばの違いは?

小笠原さん
小笠原さん
まず、生そばのほうが蕎麦粉の香りを強く感じられます。また、「そばの神田」の蕎麦はのどごしを重視して作っているので、ツルツル入っていく感じが特徴です。のどごしが良いので、冷やしで食べてもおいしいんですよ。

――そう聞くとメリットばかりに感じますが、実際に転換はスムーズでしたか?

小笠原さん
小笠原さん
そうですね。ただ、出汁は変えていませんが、蕎麦が変わることで、お客さまが離れていかないかの懸念はもちろんありました。味も変わりますし、ゆで時間がプラスされることで若干ですが提供に時間がかかるようにもなりますから。最初は1店舗のみで試験的に生そばの提供を行い、お客さまの反応を見て徐々に拡大していきました。「東一屋」という名前は東一屋本店がある「東一市場」からそのときにつけたものです。

――結果的に受け入れられていったわけですね。コロナ禍における営業はどうでしたか。

小笠原さん
小笠原さん
東一屋のほうは店舗も狭いですし、テレワークが増えたことで、やはり影響は受けました。ですが、多賀城に2018(平成30)年にオープンしたロードサイド店舗、町前屋の1号店は立ち食いそばより影響が少なかったです。店舗面積が広く、席ごとに家族で食べられることが大きかったのかもしれません。そういったこともあり、コロナ禍真っ只中の2020(令和2)年には町前屋の2店舗目にあたる中倉店をオープンしています。
そばの神田のテイクアウト

コロナ禍をきっかけにテイクアウトもスタート 【画像提供:そばの神田】

小笠原さん
小笠原さん
蕎麦や天ぷらなどの一部商品のほか、「おみやげ生そば」という商品をご用意しています。そば2玉と冷たい出汁、あげ玉がセットになって540円で、テイクアウトではこちらが一番人気ですね。年末には、年越しそばとしてご利用いただくお客さまも多くいらっしゃいました。

地元・宮城仙台での足場固めを進めつつ、いずれは県外進出も視野に

そばの神田 町前屋 中倉店 【画像提供:そばの神田】

――今後の展開について教えてください。

小笠原さん
小笠原さん
2022年の秋、名取市に町前屋の店舗がオープン予定となっています。

――宮城県外への出店は考えていませんか?

小笠原さん
小笠原さん
他県からのお声がけはいただいているので、視野には入れています。ですが今はコロナ禍ということもありますし、何よりまずは地元の皆さまに愛されるお店を目指すことを一番に考えています。
そばの神田のそば

【画像提供:そばの神田】

「立ち食いそばといえば男性がひとりで行くもの」と考えていた筆者のイメージはすでに古く、今や女性もファミリーも足しげく通う飲食店としてアップデートしていることがわかった。それだけ「そばの神田」の蕎麦がおいしく、また仙台市民・宮城県民に愛されていることの裏返しとも言えるだろう。

この取材以降、筆者もサクッとお腹を満たしたいときには気軽に「そばの神田」に入ることにしている。なんといっても安くて速くておいしい! メニューも豊富で選ぶ楽しみもある! と、すっかり立ち食いそばライフを謳歌しているというわけだ。

出勤前の腹ごしらえに、お昼休憩に、飲んだ後のシメに……と、私たちの生活に優しく寄り添う「そばの神田」のおそば。常連さんもご新規さんも、ぜひ近いうちにふらりと食べにいってみてほしい。

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『そばの神田 東一屋 駅前南町通り店』
・住所:仙台市青葉区中央3-6-12仙台南町通ビル1F
・TEL:022-267-5679
・営業時間:平日:7時00分~24時00分、日祝:7時~22時
・定休日:なし
・最寄駅:JR仙台駅
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この記事を書いた人

岩崎尚美

岩崎尚美

仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!

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