「無念を晴らしにまた仙台に来ます(笑)」女優・八木優希/単独インタビュー
9月13日に宮城県先行上映を経て、全国で順次公開中の映画『アイネクライネナハトムジーク』。公開から1ヶ月以上が経過したが、現在もTOHOシネマズ仙台やMOVIX仙台などで大ヒット上映中だ。
仙台市在住の伊坂幸太郎さんの恋愛小説集を映画化した本作は、オール仙台・宮城ロケにこだわって撮影された。
本作に女子高生の亜美子役で出演しているのが女優の八木優希(やぎ・ゆうき)さん。連続テレビ小説『ひよっこ』でも話題を呼んだ彼女に、仙台での知られざる撮影エピソードや作品の魅力などについて語ってもらった。
翌朝、観音様にびっくり
──本作が撮影されたのは2018(平成30)年4月10日から5月3日まででした。八木さんはどのくらいの期間、仙台に滞在していましたか。
わたしの撮影は1週間くらい。その間は仙台大観音の近くにあるホテルに滞在してました。
──近くで観音様をご覧になったんですね。
見ました。仙台に入ったのが夜で、その日は仙台大観音の存在に気づかなかったんです。翌朝起きてカーテンを開けたら、目の前に巨大な何かがあってすごいびっくりしました。「なんだこれは」って(笑)。毎日、部屋から拝んでました。
──それまで仙台にいらっしゃったことは。
ありませんでした。東京から北というと北海道にはお仕事で行かせていただたことはあるんですが、仙台にはなかなかご縁がなくて……。今回がはじめてでした。東北っていうことでもっと寒い地域なのかと思ったら、季節的な問題もありますがそこまで寒くなくて。仙台駅もすごい大きくて都会でした。
──滞在中は仙台を満喫できましたか。
お休みの日があったので、ひとりでバスに乗って仙台駅前まで行って、駅前の映画館で映画を見ました。
滞在中はご当地グルメを満喫
──仙台グルメは。
共演した恒松祐里ちゃんから「ずんだシェイクがおすすめ」って聞いたので、飲もうと思ってお店を探したんですけど見つけられなくて……。ずんだシェイクは諦めて仙台駅の地下にある牛タン店で牛タンを食べました。
──牛タンを堪能できたようで良かったです。お味のほうはいかがでしたか。
本っ当においしかったです〜。もともと、牛タンとか砂肝とか、食感がいい食べ物が好きなんです。でも、高価なので自宅ではあんまり食べられなくて。撮影で親もいなかったので、「食べちゃえ」ってひとりで贅沢しちゃいました(笑)。テールスープもすごくおいしかったです。
──なによりです。
あとは、揚げた丸いのが串に刺さってるやつを食べました。
──ひょうたん揚げ……ですかね。
そうですそれです。差し入れで現場に置いてあって、はじめてで何かよく分からずに食べたんですが、すっごくおいしかったです。観光地はあんまり巡れなかったので、今度仙台に行くときは観光もしたいですね。そのときは、絶対にずんだシェイクを飲みたい。あのときの無念を晴らしに必ず行きます。
──思ったより仙台を満喫できたみたいで、こちらとしてもとてもうれしいです。
仙台の方が本当に優しくて。仙台駅からバスに乗ってホテルに帰ろうとしたんですが、乗り場がたくさんありすぎて迷っちゃって。調べてもよく分からないので、近くにいたおばあちゃまに思い切って聞いたんです。それでも分からなくて、同じことを4回くらい聞いちゃいました。でも、何回聞いても優しく教えてくださって。仙台の方は優しいんだなって。
毎晩「AEON」でお買い物
──ほかはどういうところに行きましたか。
仙台滞在中に1番多くお世話になったのはホテル近くの「AEON(イオン)」かもしれないです。
──道路を挟んだ向かいにありますね。
あ、そこです(笑)。毎日AEONの地下の食品売り場に通ってました。外食するとお金がなくなっちゃうので夕飯はほぼ毎日あそこで買ってました。スーパーで買ったほうが安いですからね。
──なんか、現地の人みたいですね。
確かに(笑)。あと、あの辺だと「しまむら」にも行きました。なんかかわいい洋服はないかな〜って。
──かわいい洋服は見つかりましたか。
出会えませんでした……。でも、そう簡単に出会えるものではないですからね。『アイネクライネナハトムジーク』も、いろいろな奇跡が重なって出会いにつながってますから(笑)。
鳥肌が立つくらい感動
──それでは、映画についてお聞きします。公開から1ヶ月が経ちました。まわりからの反響は。
いろんな人から「おもしろかったよ」って言っていただけています。あと、「新鮮だった!」って感想も多いですね。
──新鮮。
普通、恋愛映画だと主人公のふたりがメインに展開されるストーリーが多いと思うんですが、アイネクライネナハトムジークの場合はいろいろな人が周囲のさまざまな人を巻き込み、10年のときをかけて恋と出会いの奇跡の連鎖を呼び起こします。そういう意味では、これまでにない恋愛映画に仕上がっているんじゃないかなって思います。
──印象に残っているシーンは。
わたしが出ているところだと、ゼビオアリーナ仙台で撮影したボクシングのシーンが印象に残ってます。
──サンドウィッチマンのおふたりも出ていたシーンですね。
あの日は観客役のエキストラさん1000人くらいも含め、朝から夜まで撮影だったんですが、終始、現場が熱気に包まれていて、本当のボクシングの試合を観にきたような感じで。あんな熱いシーンははじめてで、本当に感動しましたね。
──盛り上がりましたね。
あとは、主役の三浦(春馬)さんが仙台駅からバスを追いかけて走ってるシーン。途中、公園(※編集部注「錦町公園」)で小枝を踏むんです。何気ないシーンなんですが、「ここで全部つながってる」って思って鳥肌が立つくらい感動しました。
──伏線を回収していく感じも本作のみどころですね。
脚本を読んで知ってるのにこれだけ感動できるんですから、はじめてご覧になるかたは絶対にもっと感動していただけると思います。
──最後に、まだ映画を見ていない方にメッセージをお願いします。
とくに大きな事件が起こるわけでもないんですが、それでも、見せるところは見せる映画になっていて、どのシーンもすごく楽しめる作品です。登場人物が自分の隣にいるような、すごくナチュラルな気持ちで見られると思います。小さいお子さんから大人まで、みんなが共通して「おもしろい」と思えるはずです。まだ公開中ですので、ぜひ劇場に足を運んで楽しんでいただけたらうれしいです。
◎プロフィール
八木優希(やぎ・ゆうき)
2000年10月16日生まれ、東京都出身。
生後4ヶ月で芸能界デビューすると、その後、数多くのドラマ、映画、CMに出演。2017年には連続テレビ小説『ひよっこ』にレギュラー出演して話題を呼ぶ。その後もドラマ『いつまでも白い羽根』やドラマ『ストロベリーナイト・サーガ』に出演するなど、今後も活躍が期待される若手俳優のひとり。
写真:木下 誠
仙台駅前の大型ビジョンには、日本人のボクシング世界王者をかけたタイトルマッチが映し出されている。そんななか、会社の指令で街頭アンケートを行う会社員・佐藤(三浦春馬)が、ふとギターの弾き語りに目を向ける。ときを同じくして弾き語りに足を止めていた紗季(多部未華子)と目が合い、声をかけると快くアンケートに応えてくれた。ふたりの小さな出会いは、妻と娘に家を飛び出されて絶望を感じていた佐藤の上司・藤間(原田泰造)や、不釣り合いな美人妻・由美(森絵梨佳)と娘・美緒(恒松祐里)を持つ佐藤の親友・一真(矢本悠馬)、その娘の同級生・和人(萩原利久)の家族、由美の学生時代の同級生で美容師の美奈子(貫地谷しほり)らを巻き込み、10年のときをかけて奇跡のような瞬間を呼び起こす——。
この記事を書いた人
つきの萩子
東京の雑誌編集部で3年働いたのち、仙台と萩の月とほやが好きすぎてUターン。まだまだ知られていない仙台のディープなネタを発掘します。