男子は禁制!?仙台・国分町のレズビアンバー『楽園』ってどういうお店?
2019.10.31
国分町に“男子禁制”のバーがあるらしい――。
もはやその響きだけで何やら興奮してしまいそうだが、そこは深呼吸して気持ちを落ち着けて。いったいぜんたいどんなお店なのか? 真相を確かめるため、噂の男子禁制バー「楽園」へと赴いた。
楽園へ行ってみた
情報によると、「楽園」があるのは国分町2丁目。東北公済病院が立地する交差点を晩翠通りから東側へ入ってすぐ、左手に「ライオンビル仙台館」がある。
まだ夕刻にもかかわらず、深夜のような薄気味悪ささえ感じる……
はっきり言って、初見では若干の入りにくさがある。本当にここで合ってるよね?
間違いなさそうだ
恐る恐るビルの中へ潜入することに。どきどき。
「楽園」はライオンビル仙台館の5階にある
エレベーターを降りて右に曲がると、楽園へと続く男子禁制の扉がある。
ここが男子禁制バー「楽園」の入り口である。ごくり
(コンコン)おじゃまします!
「お待ちしておりました」
……!?!?!?(筆者混乱中)
なんとも官能的な佇まい……。現れたのは、ボンデージを身にまとったひとりの女性。ここは「楽園」と聞いていたが、どうやら筆者が想像するそれとは違うのかもしれない。
「ヒノヒロコと申します」
今回お話を聞かせていただいたのは、“男子禁制バー”こと「woman only bar 楽園」のオーナー、ヒノヒロコさん。ヒノさん、本日はよろしくお願いします!
ウーマンオンリーバー楽園ってどんなお店?
——まず、楽園はどのようなお店なんですか?
レズビアンと呼ばれる、女性が好きな女の子たちがボンデージを着て働いているお店です。2018年10月にオープンしてから1年が経ちました。
──男子禁制というのは、レズビアンバーだからなんですね。お客さんもレズビアンの方がほとんどですか?
お店の女の子たちは全員レズビアンですが、お客さまの性的嗜好には特に制限を設けていません。「すべての女性にとっての楽園でありたい」をコンセプトに、どんな女性でも受け入れています。
──じゃあ、男性が好きな女の子もウェルカムって感じなんですね。
お客さんの割合は、レズビアン5:バイセクシャル3:ストレート2くらいだそう
──どういうお客さんが多いですか?
LGBT(セクシャル・マイノリティ)とくくられている人たちの中でも、実はいろいろなタイプがいるんです。楽園にはレズビアンの方を筆頭にいろいろな方が来られます。
──例えば?
レズビアンだけど男性と望まない結婚を強いられた……スラングでは「主婦レズ」と呼ばれるような方とか、お子さんがいらっしゃる方も。その一方で、ストレートで彼氏もいるけど、きれいな女性を見るのが好きっていう方も来られますよ。
──さまざまですね。
それ以外だと、どんなお店なのか気になったとか、レズビアンの子と喋ってみたいとか……女子会に使われる方もいらっしゃいますよ。
――女子会! ぐっと気軽な感じになりますね。
テキーラが1杯500円なので、結構リーズナブルに飲めるんですよ。なので、楽しくお酒を飲みたいって方も来られます。楽園にはいわゆる“推し”の文化があるので、「推しの女の子に会いたい!」っていうお客さまがとても多いですね。
アイドルに会う感覚で来店するお客さんが多いという
――ひとりが多いですか、グループが多いですか。
1~2名で来られる方が多いです。ひとりで“推し活”を楽しみたいって方が多いんですよね。「推しに会いたい!」みたいな場合だと、事前にTwitterで気になる子の出勤日を確認して、それに合わせて来られる方が多いです。キャストドリンクが1杯500円なので、それを入れてもらうと対面でお話できます。
――年齢層は?
20歳から40代くらいまで、幅広い年齢層の女性がいらっしゃいます。
キャストドリンクを入れると、推しとじっくりお話ができる。「ワイワイ騒ぎたいときは店内奥のこのボックス席で、しっとり飲みたいときはカウンターで」とのこと
平日は男性も入店OK
「ミックス」とは、男性も女性もOK!の意味
――男子禁制バーと聞いていましたが……
最終的には女性オンリーにしていきたいと考えていますが、今のところ平日は女性と同伴であれば男性の入店もOKとしています。
――男性はどんな目的で?
キャバクラやラウンジで働いている女の子が、自分のお客さまを連れてくる……みたいなケースが多いです。でも、男性のお客さまはそんなに多くないですね。男性の場合、SMバーと勘違いして来られるお客さまが多くて……。「やらせてくれるの?」とか聞いてきたり。
――あー……(苦笑)
楽園はレズビアンの子が働いているお店なので、男性は基本的に塩対応されるんです。なので、ワンチャンを狙ってくる男性は弾き出しますし、以前、大人数で来店された男性客に対して「席が足りないので、床に座ってもらいますけどいいですか」って声をかけたくらいで(笑)。
笑みをこぼしながらSな発言をするヒノさん(笑)
――え、めちゃめちゃおもしろいじゃないですか。
そういう掛け合いを楽しめるなら、男性でも歓迎です。
女性キャストへの過度なセクハラや暴言はNG
――完全男子禁制にしないのには意味が?
3ヶ月に1度、近くのクラブハウスを借りて「レズビアンイベント」を開催していて、それに出演するDJやスタッフさんたちに打ち上げで「楽園」を利用していただいているんです。いつもお世話になっている方に楽しんでもらいたい、お店もイベントも盛り上げていきたいという思いがあるので、今のところは条件付きで男性OKにしています。
――レズビアンイベント?
戸籍上女性のお客さまだけが入れるイベントで、わたしたち楽園のキャストがステージ上で踊るんです。女の子100人くらいが集まってダンスを見たり、女の子同士の出会いの場にもなったり。毎回ドレスコードを設けていて、例えばポリスナイトがテーマなら、キャストもお客さまも全員ポリスの格好をして集まります。
東北最大級のウーマンオンリーイベント「LADY EDEN」は、クラブスコール(青葉区大町)にて開催される
楽園の料金システムは?
――「楽園、気になる!」って思っても、ちょっと行きにくいなって感じている方も多いんじゃないかと思います。お店の料金やシステムについて教えていただけますか?
まず料金システムですが、飲み放題が90分3,500円、ソフトドリンクのみなら2,500円。ショットの場合はお席代が1,000円。ドリンクが1杯800円からなので、1,800円からお楽しみいただけます。
――バーにしては、かなりリーズナブルな料金設定ですよね。
そうですね。
Twitterからのご予約で飲み放題が500円割引きになるので、他のバーと比べてもリーズナブルだと思います。
――男女ともに同じ料金ですか?
男性は90分5,000円のみとなっています。「お金をいくら持っていけばいいのかわからない」という方が多いんですが、うちは全部前金でいただいています。
例えば飲み放題の3,500円も最初に頂戴して、90分経ったら「どうしますか?」って。他のメニューも全部前金なので、お店を出るときの支払いはありませんし、自分でどれくらいお金を使っているのかも把握しやすいと思います。
──明朗会計ですね。
普段あまりバーには行かないって方でも入りやすいですよ。カウンターに座って1杯だけで楽しむお客さまも多いです。
楽園ではすべてのメニューが前金制なので、バーに馴染みのない人でも安心
――オリジナルシャンパンというのがありますね。
楽園で一人前のキャストとして認められると、オリジナルデザインのシャンパンが出せるようになります。オリジナルシャンパンには、キャストの顔写真がデザインされたラベルが貼られています。
一人前として認められる条件とは?
6,500円以上のシャンパンを3本入れてもらえたら一人前としています。お客さまの中には、自分が推している女の子を応援したい、一番にしたいって思う方が結構いらっしゃるんです。そういう方は推しの子のために1人で3本入れてくれたり、お給料日の度に1本ずつ入れてくれたりします。
――アイドル文化みたいな感じなんですね。
アイドルとこの距離で話せるのはうれしい
──他にもいろいろなメニューがありますが……人気のメニューは?
ドリンクだと、キャストの作るオリジナルカクテルが人気です。バーに来たことがないお客さまだと、何を頼んだらいいか迷われることが多いようで。そういうときはオリカクをお出ししています。
――居酒屋にはない魅力ですよね。飲み放題の料金で頼めるんですか?
はい。ほかにも「バブ汁」といって、哺乳瓶にお酒を入れて飲んだり(笑)。
「バブ汁」に使用される哺乳瓶。ヒノさん曰く「プレイのひとつ」
王様ゲームやチェキなど、エンターテインメント性もばっちり
楽園立ち上げのきっかけは「女の子の幸せ」
——楽園のオープンから約1年ですが、それまでは何をされていたんですか?
──意外です。
その当時も「レズビアンイベント」を主催していたんです。でも、イベントだとゆっくり会話を楽しめないんですよね。そんな中で、疲れたときに推しに会いにいって励ましてもらったり、推しのために頑張ろうと思えたり。女の子が幸せを感じられる “楽園”のようなお店を作りたいなって思っていて。
──イベントだけでは実現できないと。
そうなんです。しかも、そんなタイミングで国分町に唯一あったウーマンオンリーバーがつぶれちゃったんです。それをきっかけに、こことは別のお店を間借りさせてもらって、日曜日限定で営業をはじめました。
──日曜日限定ってことは副業的な?
そうです。会社勤めをしながらバーもやって……当時はほとんど寝てなかったです。で、ふらっと立ち寄った不動産屋さんにこの場所を紹介してもらって、トントン拍子に話が進んで1年前にオープン、みたいな感じです。当時はお金があまりなかったので、内装はほとんどDIYなんですよ。
装飾や絵など、ほとんどが自分たちの手作りだという
――全部DIYとは……すごいですね!
たまに酔っ払ったお客さまが壊したりしますけどね(笑)。
(それはアカンやつや……)
カフェの営業を開始
――カフェの営業をはじめたそうですね。
はい。毎月最終日曜日の14時から19時まで、喫茶室「楽園」として営業しています。
――バータイムとはまた違ったコンセプトがあるのでしょうか。
LGBTについて悩んでいる方や、お店に興味を持ってくれている未成年の子たちに楽しめる空間を提供したいと考えたのがきっかけです。それと、ワイワイ騒ぐんじゃなくてじっくりと話したり飲んだりっていうのは、バーよりカフェの方が向いてるのかなって。それで、9月からスタートしました。
――メニューや料金に違いはありますか。
お席代が90分1,000円で、それ以外はワンオーダー制です。注文はフード、ドリンク、チェキなど何でもOKなので、バータイムよりも少しお安いですね。
サンドイッチなどの軽食も用意 【画像提供:ウーマンオンリーバー楽園】
――予約は必要ですか?
――カフェの営業がスタートすることによって、さらに今までより多くの方に知ってもらえるようになりますね。
そうですね。楽園もようやく1年。今後もこの地で根を張ってやっていきたい気持ちでいるので、たくさんの女性に楽園のことを知っていただきたいですね。
禁断の扉を開けた瞬間はどうなるかと心配だったが、楽園はLGBTに特化したお店でありながら、すべての女性を受け入れる素敵すぎる空間だった。
現在、楽園には20名弱のキャストが在籍しており、全員がそれぞれのTwitterアカウントで出勤日などを発信しているという。
楽園についてもっと知りたいと思ったあなたは、まずTwitterをのぞいてみてほしい。きっと、あなたにとっての「楽園」が見つかるはずだ。
『ウーマンオンリーバー楽園』
・住所:宮城県仙台市青葉区国分町2丁目8-3 ライオンビル仙台館5F
・営業時間:19時~ラスト
・定休日:月曜日
・禁煙/喫煙:喫煙
ホームページ
『喫茶室 楽園』
・住所:宮城県仙台市青葉区国分町2丁目8-3 ライオンビル仙台館5F
・営業時間:14時~19時
・営業日:毎月最終日曜日のみ
・禁煙/喫煙:完全禁煙
ホームページ
この記事を書いた人
岩崎尚美
仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!
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