僧侶のコスプレもできる仙台・国分町の坊主バー『あみたBAR』に潜入!

2019.12.23

国分町、そこは人々を惹きつける魅惑のまち。そんな国分町に、お坊さんがカウンターに立つ“坊主バー”があるとの情報をキャッチした。

坊主バーとはいったいどんなバーなのか。どんなお坊さんがどんなお酒を出してくれるのか。疑問を解消するため、だてらぼ編集部は夜のギラギラな国分町へと向かった。

国分町にある“坊主バー”へ行ってみた

情報をもとに足を運んだのは、仙台のザ・繁華街である国分町。広瀬通と国分町通の交差点に立てられた「国分町ゲート」をくぐり、100メートルほど歩いたところに「第2藤原屋ビル」が立っている。

第2藤原屋ビルの画像

坊主バー「あみたBAR」は、このビルの5階で営業している

あみたBARの外観画像

あみたBARは、エレベーターを降りてすぐの通路突き当り、左手にある

夜の国分町では、すっかりご機嫌モードに入った人々が千鳥足で行き交っていた。こうした雰囲気に慣れない筆者はというと……

筆者の表情

なんとも言えないこの表情である。

とにかく、気を取り直して入ってみよう。

(コンコン)

あみたBARの入り口の花の画像

「南無阿弥陀佛〜♪(お経のBGM)」

筆者「……」

扉を開けると、腹の底に響くようなお経が聞こえてきた。それだけではない。線香の香りが店いっぱいに充満している。あれ、ここはお寺だったかな? 一瞬そんな感覚に襲われた。

が、すぐに「いらっしゃいませ! 奥へどうぞ」と声が聞こえ、我に返る。

そうだ、ここは国分町。坊主バーなのだ。

あみたBARの住職の画像

「お待ちしておりました」

今回お話を聞かせていただいたのは、「あみたBAR」のオーナー・二木佑弥(ふたき・ゆうや)さん。仙台市若林区にある「長称寺(ちょうしょうじ)」の16代目住職であり、正真正銘、現役のお坊さんなのだ。二木さん、よろしくお願いします!

坊主バー「あみたBAR」とはどんなお店?

あみたBARの仏壇の画像

さすが坊主バー。店内には仏壇がある

——坊主バーってどんなお店なのでしょうか。

二木さん
二木さん
一言で言えば、お坊さんがやっているバーですね。2019年の1月にオープンしました。

――ちょうど1年になるんですね。「あみた」という店名の由来は?

二木さん
二木さん
阿弥陀如来のことを、サンスクリット語で「アミターバ」というんです。そこから取りました。
カウンターに置いてあるお焼香用の香炉

カウンターにはお焼香用の香炉が。意外とお酒との相性が良いらしい

――どんなお客さんが多いですか?

二木さん
二木さん
年齢層は50代以上が多いです。性別では、男性が多いですね。

――ひとりで来る人とグループ。どちらが多いですか。

二木さん
二木さん
ひとりかふたり、少人数で来られる方が多いですね。
あみたバーのカウンターの画像

カウンターが5席

あみたバーのテーブル席の画像

テーブル席には、「座ろうと思えば6人座れます」とのこと

――お坊さんとバーの組み合わせって珍しい気がします。

二木さん
二木さん
東京の四谷に有名な坊主バーがありますし、京都にもありますよ。

――知らないだけで、全国にあるんですね。

二木さん
二木さん
仏教って、皆さんが思っているより前向きでおもしろいんですよ。浄土真宗は生きている人のための宗教ですしね。人生もお酒も、見方を少し変えてみると違った面が見えてくる。こうした考え方が大切なんです。
あみたバーのコースターの画像

コースターには、ありがたいお言葉がずらり

――そういった思いがあって、バーをはじめられたんですね。ちなみに、二木さんもお酒を飲むんですか?

二木さん
二木さん
好きですね。大学生の頃、3年間バーテンダーをやっていたくらいです。
あみたバーのバーテンダーの画像

作務衣を身に纏うバーテンダー

――お坊さんにそんなキャリアを持つ方がいるとは。

二木さん
二木さん
サラリーマンもやりましたよ。宗派やお寺にもよりますが、お坊さんになる前はわりと自由なんです。
国分町の坊主バーのオーナーの画像

バーの仕事は「副業です」とほほえむ二木さん。意外と副業をしているお坊さんは多いそうだ

坊主バー「あみたBAR」はお酒の種類が豊富

――あみたBARの楽しみ方を教えてください。

二木さん
二木さん
僕自身もお酒が好きなので、お酒にはこだわっています。ジャパニーズの種類は多いほうじゃないかな。
あみたBARのウイスキーの画像

漢字のラベルが貼られているのが「ジャパニーズウイスキー」

二木さん
二木さん
あと、ちょっと変わったお酒も揃えていますよ。デビルマンとか、釣りバカ日誌とか。出版社の小学館から出てるウイスキーです。
あみたバーのお酒の種類

一風変わったラインナップが楽しめるのも、あみたBARの魅力だ

——こんなお酒があるんですね! それぞれ中身も違うんですか?

二木さん
二木さん
はい。例えばこの(写真右端)デビルマンのラベルは、「インペリアル」というお酒の20年熟成もの。アルコール度数は51%で、すごく強いお酒です。

――どれも男性が好みそうなラベルです。見ているだけで話題が尽きないですね。カクテルもありますか?

二木さん
二木さん
もちろん。基本的に一通りできますよ。シェーカーを振れる坊主ですから(笑)。
あみたバーのオリジナルカクテルの画像

オリジナルカクテルもある。名前は、仏教用語から

――フードメニューは?

二木さん
二木さん
今はないです。キッチンはあるので、スタッフを雇えたらやりたいですね。料理好きなので。

――以前はどんなメニューがあったんですか。

二木さん
二木さん
寒い日は鍋とか。ラーメンやそばを麺から作って出したこともありました。国分町の飲食店の人に味を見てもらったら、「おいしい」と言ってもらえた自信作です。

――それはぜひ食べてみたいですね! 今、お店はおひとりで?

二木さん
二木さん
はい。一応アルバイトも募集しているんですが、今はひとりです。

――ちなみに、アルバイトの採用条件は。

二木さん
二木さん
宗派を問わずお坊さんであることですね。もしくは、お坊さんでなくてもバーテンダー経験があればOKです。

グラスにまでこだわった上質な空間

実は取材時、店内にはひとりの男性客が。30代の彼は、お酒に疎い筆者には思いもよらない点に触れた。

男性客
男性客
ここのお酒はおいしいですね。グラスも薄いし。
二木さん
二木さん
ありがとうございます。木村(硝子店)の薄玻璃(うすはり)なんですが、気づいてもらえるとうれしいです。
坊主バーの薄玻璃のグラスの画像

薄玻璃(うすはり)のガラス。まるでプラスチックのように薄くて軽い

男性客
男性客
結構飲み歩いてますけど、ここは本当においしいですよ。今日はじめて来ましたけど、線香の香りとお酒って意外と合いますね。

――他のグラスもすごくきれいですね。

二木さん
二木さん
江戸切子もありますし、ロックグラスはほとんどバカラです。
坊主バーのバカラの画像

江戸切子とバカラのグラス。「重厚感があって、氷を回すときに安定する」と二木さん

男性客
男性客
ひとつ1万円以上もするいいグラスばかりじゃないですか! お寺の経費で出てるんですか?
二木さん
二木さん
そんなわけないじゃないですか(苦笑)。全部自腹です。ちゃんとしたものを提供したいので、なるべくいいものを使うようにしています。
男性客
男性客
バーって、 “空間”にお金を払う場所ですからね。
坊主バーのオーナーが氷を削っている画像

「味が全然違うんです」と、氷の削り方にもこだわりあり

――コスプレ衣装があるんですよね?

二木さん
二木さん
はい。袈裟のコスプレができます。今まで4人ほど着ていかれましたよ。

――どんな方が着るんですか。

二木さん
二木さん
女性の方でしたね。インスタにでもアップしてくれたらいいのに、友達同士できゃっきゃして帰っていくだけでした。

――インスタ映えしそうなのに……

というわけで、筆者も袈裟コスプレを体験してみることに。

袈裟のコスプレをしている画像

これを……

坊主バーはコスプレできる画像

こうして……

坊主バーでコスプレしている画像

こうじゃ!

聞くところによると、宗派の中でも偉い人しか着られない色の袈裟らしい。どっしりと重さがあり、「コスプレ」という言葉の響きが申し訳なくなるほど厳かな気持ちになってしまった。なんまんだぶ。なんまんだぶ。

あみたBARの料金システムは?

坊主バーの仏教本の画像

――あみたBARの料金システムを教えてください。

二木さん
二木さん
チャージ代が800円で、チョコレートを一緒にお出ししています。あとはお酒によって値段が違いますが、一番安いハイボールが1杯700円から、高くても1杯3500円です。支払い方法は現金でお願いしています。

――年配のお客さんが多いと伺いましたが、若い人が来ても大丈夫ですか。

二木さん
二木さん
もちろん。騒ぐなどほかのお客さまの迷惑になるようなことさえしなければ、どなたでも気軽に来ていただきたいです。バーに慣れていない方に飲み方を教えることもできますし。
男性客
男性客
ショットバーに興味があるけど行く勇気がない人には良いと思いますよ。ほかのバーと比べてちょっと安いし。
坊主バーで悩み相談している画像

悩みを聞いたり、人生相談を受けたりすることも少なくないという

いったいどんな場所なのかとドキドキで向かった坊主バー「あみたBAR」だったが、お坊さんの二木さんはとても気さくで話しやすい人だった。入店時には驚いたお経のBGMと線香の香りも滞在中にすっかり馴染み、心を落ち着けてくれるようだ。

ちなみにオーナーの二木さんは現役の住職のため、お通夜や葬儀で営業時間が変動する場合がある。公式サイトでお知らせしているので、来店前にチェックすることをおすすめする。

お酒好きをも唸らせる味と雰囲気を堪能しに、ぜひ国分町にある坊主バー「あみたBAR」まで足を伸ばしてみてはいかがだろうか。

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坊主バー『あみたBAR』
・住所:宮城県仙台市青葉区国分町2-1-14 第2藤原屋ビル5階
・営業時間:19時00分〜24時30分(ラストオーダー)
・定休日:不定休
・喫煙/禁煙:喫煙
『ホームページ』

この記事を書いた人

岩崎尚美

岩崎尚美

仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!

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