仙台の人気和菓子店「和菓子 まめいち」が生み出す一期一会の創作菓子が美しすぎた

2022.08.07

仙台市青葉区本町にある「和菓子 まめいち」。京都の老舗和菓子店で修行した女性和菓子職人が切り盛りする創作和菓子店だ。

彼女が作る美しくも個性あふれる和菓子の数々に魅了され、連日たくさんのお客が訪れる「和菓子 まめいち」の魅力をレポートする。

仙台の和菓子店「まめいち」へのアクセス

「和菓子 まめいち」の住所は仙台市青葉区本町2丁目19-9。入口が少々分かりづらいので、足を運ぶ前にチェックしてほしい。

錦町公園から道路を1本挟んだ西側にある「クリスタルパレス本町ビル」の2階だ。

まめいちいへの行き方

ここを入って道なりにまっすぐ

定禅寺通り沿いにある「松かま 仙台本店」とNHKビルの間の細道を入り、道なりに進むと見えてくるグレーのビルがそれ。ここからのルートが一番わかりやすいはずだ。

まめいちのビル

グレーのビル

ちなみにビルの西側、東三番丁通りからの入り口もあるが、こちら側から入ると階段を登って一旦外に出て、また階段を登って……とややわかりにくいので注意。

ビルの中をいったん抜け、奥の階段を登る

外に出たらまた階段を登り、その先の扉から「まめいち」へ

まめいちのオーナー

にこやかな笑顔で迎えてくれたのは、「まめいち」店主の幾世橋陽子(きよはし・ようこ)さん。幾世橋さん、どうぞよろしくお願いします!

同じ和菓子は作らない!一期一会の創作菓子と出会える

まめいちの和菓子

――仙台にも数多くの和菓子店がありますが、「まめいち」の特徴は?

幾世橋さん
幾世橋さん
「まめいち」は毎月テーマを決め、そのテーマに沿ってお菓子たちを生み出している創作和菓子店です。毎月だいたい4種類くらいの創作和菓子のほか、たとえば桜餅や柏餅などその月の行事菓子があればプラスで1種類。月によりますが、店頭には5種類くらいのお菓子が並びます。

――ラインナップは毎月変わるんですか?

幾世橋さん
幾世橋さん
はい。テーマに沿ったお菓子を毎月新しく考えますので、ガラッと変わります。
まめいちの6月の和菓子

2022(令和4)年6月の創作和菓子のテーマは「和菓子の日」。左上から時計回りに「元気餅(440円)」「みずはの恵(440円)」「有難糖(ありがたとう/450円)」「天のたむ酒(410円)」

――見た目も名前も個性的ですね! それぞれの特徴を教えてください。

幾世橋さん
幾世橋さん
全国和菓子協会では6月16日を「和菓子の日」と制定しているのですが、これといった行事菓子がないんです。「それならまめいちで作ろう!」と考えたのが「元気餅」。梅干しやかつお節、金ごまなど7種類の原料から作っています。

お餅に包まれた梅干しでさっぱりいただける

幾世橋さん
幾世橋さん
100年後、和菓子の歴史を記した本に「宮城県のある和菓子職人が作り続けてきたことによって、いつしかこの『元気餅』が和菓子の日の行事菓子になっていた」なんて書かれるようになったら素敵だなって思ってるんです。

――100年後……! 夢がありますね。他の和菓子についても教えてください。

仙台の人気和菓子店の和菓子

「みずはの恵(440円)」

幾世橋さん
幾世橋さん
「みずはの恵」は甘納豆の入った抹茶浮島(蒸し菓子)です。上には、綺麗な青を表現できるバタフライピーの餡を乗せました。
和菓子職人が作る創造的な和菓子

「有難糖(ありがたとう/450円)」

幾世橋さん
幾世橋さん
「有難糖」はお菓子作りに欠かせない砂糖作りに関わるすべての人への「ありがとう」を表現して作りました。上にちょこんと乗っているのは、角砂糖に見立てたすり琥珀(干菓子)です。

「天のたむ酒(410円)」

幾世橋さん
幾世橋さん
「天のたむ酒」は甘酒とハーブバタフライピーを使い、色が綺麗に二層になるよう作りました。暑い時期にぴったりの和菓子です。

――どれも個性的で、素敵ですね! 6月のテーマは「和菓子の日」とのことですが、来年の6月にはまた同じ和菓子が食べられますか?

幾世橋さん
幾世橋さん
「元気餅」は100年後まで残そうと思っているので、また来年の6月(和菓子の日)にも作ると思いますが、他の和菓子は変わりますね。

――では基本的に、同じ和菓子は二度と店頭には並ばない?

幾世橋さん
幾世橋さん
創作菓子に関してはそうですね。まれにお客さまからのご要望で、以前作ったお菓子を再販することもありますが、どう作ったのかを忘れてしまっていることも多いので(笑)。少し違ったものになることがほとんどです。

2022年8月のテーマは「中国四千年の歴史」。夏らしく、全体的に涼しげな印象だ 【画像提供:まめいち】

幾世橋さん
幾世橋さん
ただ、わらび餅や桜餅、柏餅など伝統的な行事菓子については、その時期が来れば変わらずに作っています。

6月の行事菓子は「水無月」。夏越の祓(なごしのはらえ)が行われる6月30日に食べるとされている

――毎月新しいお菓子のアイデアを3つも4つも創出するって、すごく大変そうですね。

幾世橋さん
幾世橋さん
たしかに、生みの苦しみはありますね。でも色や形、味といった要素は無限にあるので、私が生きている間には全部生み出せないくらい、お菓子のアイデアやテーマってまだまだたくさん存在しているんです。なので、追いつかないって感覚のほうが強いですね。

創作菓子だけじゃない、伝統菓子のおいしさもしっかり伝えていく

まめいちの和菓子職人

――これまで生み出してきたお菓子のなかで、とくに人気のあった商品は?

幾世橋さん
幾世橋さん
とくに人気なのが「本わらび餅」。こしあんを本わらび粉でぷるんと包んできなこをまぶしたお菓子です。本わらび粉は山菜の根からわずかしか抽出できないので、とても貴重なんですよ。

左がまめいちの「本わらび餅」。つるりとしていて弾力がありながら、口の中で溶けていく食感が味わえる 【画像提供:まめいち】

幾世橋さん
幾世橋さん
「栗しぼり」も人気です。栗100%に甘さを調整する程度のお砂糖を加えて、キュッと絞っただけのシンプルなお菓子なんですが、秋になるとお客さまから「栗しぼりはいつ買えるの?」とたくさんのお問い合わせをいただきます。「栗しぼり」も「本わらび餅」も伝統的な行事菓子ですので、和菓子店としてこういった伝統的なお菓子もおいしく、しっかり伝えていこうと思っています。

毎年人気の「栗しぼり」【画像提供:まめいち】

――創作和菓子で人気だったものは?

幾世橋さん
幾世橋さん
2019(令和元)年7月に「北前船」をテーマにした際に作った「一か八か」というお菓子ですね。梅干し白餡を道明寺のお餅で包み、北海道産のおぼろ昆布をまぶしたものです。

一番左が「一か八か」。和テイストで独特な味わいが人気の秘訣だそう【画像提供:まめいち】

――おぼろ昆布ですか。変わったお菓子ですね。

幾世橋さん
幾世橋さん
このほかにも、変わり道明寺はいくつか作っていて。醤油味の道明寺にラー油をたらして、海苔で挟んでみたり。これも結構人気がありましたね。全体的に「和」テイストのものが人気です。

「京菓子展」での受賞と、それによって芽生えた気持ち

――これまでたくさんの和菓子を生み出してきたなかで、幾世橋さんにとってとくに思い入れのある和菓子は?

幾世橋さん
幾世橋さん
「支倉常長」をテーマにした時に作ったお菓子があるんですが、その時は仙台市博物館に行って、常長が異国に渡る際に伊達政宗公から贈られたという着物をずっと見ながらお菓子のアイデアを練っていました。それはとても思い出深いですね。

2021年の京菓子展で榎本信之賞を受賞した「雲上の快」【画像提供:まめいち】

幾世橋さん
幾世橋さん
あと、京都で毎年「京菓子展」という展示会が開催されているんですが、「まめいち」はこれまでに3度賞を受賞していまして。2016(平成28)年には「百花の王」が大賞を受賞しています。2019(令和元)年には「天の白雲」が奨励賞を受賞。直近ですと2021(令和3)年に「雲上の快」というお菓子で榎本信之賞をいただきました。これらも個人的には思い入れがあります。

――受賞したことで、何か変化はありましたか?

幾世橋さん
幾世橋さん
お菓子に対する想いの込め方が変わったと感じています。1つのテーマについてより深く掘り下げて考えるようになりました。歴史や先人の気持ちに思いを馳せつつ、そこから学んで今の私たちの生活が少しでも明るくなったり楽しくなったり、そういうふうになればいいなと。これは、京菓子展にチャレンジしたことで芽生えた意識かもしれません。

午後には売り切れ続出!確実に購入するなら予約がおすすめ

――「まめいち」に来店するのは、どんなお客さんが多いですか?

幾世橋さん
幾世橋さん
年齢層は幅広くて、下は5歳くらい、上は60歳以上などご年配の方までいらっしゃいます。最近は20代~30代の若い世代のお客さまが増えた印象がありますね。

――女性が多いですか?

幾世橋さん
幾世橋さん
基本的にはそうですが、20代から40代くらいの男性のお客さまもずいぶん増えました。「毎月楽しみにしてます」なんて声をかけてくれる方もいらっしゃるんですよ。

――ファン層が広いんですね。和菓子はだいたい、午前中には売り切れてしまいますか?

幾世橋さん
幾世橋さん
そうですね。オープン直後の10時から11時にかけてが一番混む時間帯なので、確実に買いたい場合はオープンと同時にお越しいただくのがおすすめです。

平日は各20個、休日は各30個ほど和菓子を用意する。午後にはショーケースはガラガラだ

――予約は受けつけていますか?

幾世橋さん
幾世橋さん
はい。基本的には店頭で直接かお電話で受けつけています。前日までにご予約いただくのが確実ですが、当日でも商品があればお取り置き可能です。今月のお菓子を買いに来るついでに、来月の予約をしていかれるお客さまもいらっしゃいますよ。

夢は「まだ誰も見たことのない和菓子を作りたい」

仙台の人気和菓子店まめいちのオーナー

――今後の展望について教えてください。

幾世橋さん
幾世橋さん
大きな目標としては、まだ誰も見たことがない和菓子作りをすることです。まめいちの幾世橋陽子が作ったお菓子を後世に残す。とても難しいことでしょうが、実現させたい夢ですね。
まめいちの焼き菓子

店内では和菓子以外に、焼き菓子の販売も

幾世橋さん
幾世橋さん
近々の目標としては、オンラインショップを立ち上げることです。和菓子は当日中にお召し上がりいただくものなので難しいですが、まめいちでは焼き菓子も販売しているので、まずは焼き菓子のオンライン販売からスタートさせるつもりです。

まめいちのお菓子に合うようオリジナルブレンドされたコーヒーもあり

毎月違ったテーマで和菓子を生み出し、かつ同じものは二度と店頭に並ばない――そんな、一般的な和菓子店とはひと味違ったまめいちの魅力やこだわりに、お話を聞くうちにどっぷりハマってしまった。

生み出す和菓子の1つひとつに物語があり、その物語をもとにお客との交流が生まれたり、新たな和菓子のアイデアが生まれたりとどんどん世界が広がっていくのだそう。

「ちょっと疲れたから、甘いものが食べたい」。そんなときは、今しか出会えない和菓子を求めて「和菓子 まめいち」に足を運んでみてはいかがだろうか?

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『和菓子 まめいち』
・住所:仙台市青葉区本町2丁目19-9 クリスタルパレス本町ビル東側2F
・TEL:022-302-4720
・営業時間:10時00分~16時00分
・定休日:不定休
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この記事を書いた人

岩崎尚美

岩崎尚美

仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!

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