KHB東日本放送が2021年秋に移転!なぜ移転?なぜあすと長町?全部聞いてきた
2020.05.14
「KHB東日本放送」は、2021年10月にあすと長町へ新社屋の移転を予定している。2019(令和元)年10月に「KHB東日本放送の新社屋着工」のニュースが報じられると、SNSを中心に大きな話題となった。
そこで、すでに着工している新社屋の様子をお伝えするとともに、移転のきっかけやあすと長町に決定した理由などをKHB東日本放送に聞いてきた。
KHB東日本放送の新社屋の現状は?
まず最初に、KHB東日本放送の新社屋の現状(2020年1月現在)の様子をお伝えする。
場所はこちら【画像提供:東日本放送】
新社屋の詳しい場所としては、最寄りのJR長町駅から徒歩5分ほど。「ゼビオアリーナ仙台」や「スーパースポーツゼビオあすと長町店」があるあたり。周辺には「IKEA仙台」もあり、週末ともなると多くの人で賑わいを見せるエリアだ。
目の前には大きな広場(杜の広場公園)がある
建築計画のお知らせ
仮囲いにはKHB東日本放送のマスコットキャラクター「ぐりり」たちのイラストも
県道273号(仙台名取線)側に回ると、中の様子が確認できる
なお、東日本放送(KHB)のホームページ内で、最新の工事の様子がアップされているのでそちらも要チェック!
※2020(令和2年)4月22日現在の様子
現在の新社屋の様子が分かったところで、移転するきっかけや、なぜあすと長町なのか。そして完成後はどう生まれ変わるのか——これらの全貌を明らかにするため、KHB東日本放送に向かった。
KHB東日本放送にレッツゴー
現在、KHB東日本放送の社屋があるのは仙台市青葉区双葉ヶ丘。小高い丘の上の住宅街に、不自然なくらいひときわ存在感を放つ建物が東日本放送(KHB)の社屋だ。
取材に応じてくれたのは、KHB東日本放送・新社屋プロジェクト室の志賀英仁(しが・ひでひと)さん。
好きな番組は「アメトーーク!」やスポーツ関係で、「入社前はほかのチャンネルを見ちゃダメだと思ったんですが、トレンドとかをキャッチするためにも、むしろ5チャン以外のほうが見てるかもしれないです」とのこと。
志賀さん、よろしくお願いします!
まず、KHB東日本放送の新社屋移転の経緯について質問すると、「2016年3月にあすと長町への本社移転計画推進のため、移転先候補地の売買契約を締結し、2019年10月の地鎮祭を経て、同年11月に着工となりました。そして、2021年1月末に竣工し、同年の10月から運用を開始する予定です」と志賀さん。
◎KHB東日本放送の新社屋ってどんな建物?
KHB東日本放送の新社屋のイメージ画像
屋上には広場もある
——すごく特徴的なデザインですね。
そうですね。長町のランドマークになるような建物にしたいという思いがあります。ですので、シンプルな真四角ではなく、外側に階段が張り出しているようなデザインになっているんです。
よ〜く見ると階段になっているのが分かる
鉄骨造の地上4階の建物なんですが、この階段は2階から4階を行き来できるようにしています。ガラス張りにすることで開放感のあるつくりにしているだけでなく、外からも中の雰囲気が見えるようなデザインが特徴です。
——ということは、この階段が杜の広場公園側ってことですか?
そうですね。あと外観では、ひねりを加えた鉄塔も特徴のひとつです。
本当だ、ひねってある!
いまは普通にまっすぐ
——電波には影響しないんですか?
——ほっ。あと、プレスリリースに書いてあった「災害に強く、視聴者に迅速かつ正確な情報を届けられる施設として整備する」というのは?
テレビ局の使命として、大災害などのときも決して放送を止めるわけにはいきません。そういう意味も含め、庁舎や主要な病院などと同じように災害に強い建物にしています。たとえば、浸水対策として全体的に1メートルほどかさ上げするなどしています。
1メートルほど高い場所に建っているのが分かる
あとは、災害などで停電になった場合でも、放送できるような仕組みにしてあるのも特徴です。
——1階にカフェを併設するとも書いてありましたね。
まだ詳細は決まっていませんが、一般の方もご利用いただけるカフェを併設予定です。あと、1階では公開収録をはじめとしたさまざまなイベントを開催できるように、200人くらいが入れる多目的ホールを用意しようと考えています。
1階は一般利用もできるカフェや多目的ホールなどで構成される
テレビ局って入りにくいイメージがあると思うんですが、こういうつくりにすることで、そういったイメージも払拭できたらと考えています。
——ちなみに、現在の社屋と比べると広くなるんですか?
そうですね。現社屋が5880平米で、新社屋が8510平米なので、およそ1.5倍の広さになります。
◎移転の経緯は?
——そもそも、どうして移転することになったんですか?
これからのテレビ局のあり方を考えたときに、より視聴者と触れ合いたい。より地域に開かれたテレビ局でありたい。そう考え、移転を計画しました。
現状は、決して開かれたエリアとは言えない
——確かに、この場所では決して「地域に開かれた」とはいえないですね。
そうなんです。1階に一般利用できるカフェがあるんですが、利用いただくこともほとんどありません。
1階エントランス内にあるカフェ。利用するのはほとんどがKHB東日本放送の関係者だそう
——「テレビ局は開かれた場所にあるべき」みたいな考えの背景ってなんかあるんですか?
やはり、インターネットが台頭してきたことが大きく関係しています。昔はテレビがお茶の間の主役でしたが、スマホが普及してからはそのカルチャーも薄れていると言わざるを得ない状況なんです。
——いわゆるテレビ離れ、ですね。
おっしゃる通りです。そういったことを考えると、テレビ局として根本から考えを変えていかないといけないな、と。
電通が2019年に発表した「2019年 日本の広告費」によると、2019年にネット広告費がテレビを抜き、2兆円を突破した
——でも、仙台にあるテレビ局は、全体的に「地域に開かれた」印象はありません。
そうかもしれませんね。「地域に開かれたテレビ局」と感じてもらうには、まず立地が重要だと思います。アクセスしやすい場所にあれば、みんなに集まってもらいやすいですよね。しかし、立地が良いだけでテレビ局を訪れたいと思ってもらえるわけもなく、“人を呼び込む仕掛け”が重要になります。たとえば、フジテレビは社屋の内外でさまざまなイベントを実施するなど、積極的に人を呼び込んで賑わいを創出しています。
——仙台のテレビ局は、ちょっと遅れてる感じなんですかね……。
一概には言えませんが、それにはテレビ局特有の理由があって。テレビ局は移転する際にも、放送を止めることはできません。したがって、移転時は同時に並行して2つの場所から放送できる環境を構築しておく必要があります。 また、皆さまに放送をお届けするためにはマスターという重要な部屋があるんですが、そこにある放送設備の更新が約15年ごとに行われます。この更新には莫大な費用がかかり、一般的にテレビ局が移転する場合は、このタイミングに合わせて移転するケースがほとんどです。
——じゃ、KHB東日本放送はそのタイミングも含めて移転を決定したと。
——ちなみに、現在の社屋はどれくらいの年数になるんですか。
移転予定の2021年でちょうど30年になります。建物としてはまだまだ使えるんですが、先ほどお伝えしたもろもろの理由で移転することになりました。
◎なぜ、あすと長町に?
——ぶっちゃけ、どうしてあすと長町なんですか?
理由はいくつかありますが、交通アクセスが良いうえに、あのあたりは再開発中の地域ですよね。
——以前とはだいぶ変わって、「住みたい街」としても人気ですよね。
そうですね。近くには商業施設や病院もありますし、KHB東日本放送が命名権を取得している「KHB東日本放送ぐりりスポーツパーク」や「ゼビオアリーナ仙台」もある。非常にバランスの取れたエリアなんです。
周辺にある仙台市立病院
ぐりりスポーツパークにはフットサルコートやテニスコートなどがある
テレビ局のあり方の話に戻りますが、地域に開かれたテレビ局を目指すとなると、周辺のこういった施設との相乗効果も期待しないといけません。
——目の前には広場もありますもんね。
そうですね。杜の広場公園は一般的なサッカーコートの1.5倍ほどの大きさで、2018(平成30)年からは「太白区民まつり」も開催されているんです。5万人もの人が訪れるそうです。そういったイベントも含め、杜の広場公園を十分に活用しながら街全体に賑わいをつくりだすなど、地域の発展にも貢献していきたいと考えています。
「杜の広場は、あすと長町地区における市民交流活動の拠点として、仙台市が整備を行いました」
新社屋の運用開始は2021年10月
一般の私たちからすると、華やかなイメージすらあるテレビ局。これまではあまり触れ合う機会がなかっただけに、2021年10月からの運用開始が楽しみでしかたない。
だてらぼ編集部では、今後もKHB東日本放送の新社屋の動向に注目していく。気になることがあれば編集部が責任を持って調査しますので、どしどしお寄せください。
info@datelabo.com
この記事を書いた人
幸谷亮
仙台が大好きすぎて「だてらぼ」を立ち上げたひと。雑誌編集部→雑誌編集部→2016年に独立。雑誌編集部時代に身につけた取材力を武器に、みなさんの気になるネタを全容解明します。
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