不思議すぎる文庫喫茶バー「へんてこ屋」で、おもしろ雑貨たちにまみれてきた
一番町に、「へんてこ屋」なる名前のお店があるという情報をキャッチした。
「へんてこ屋」ということで、建物の形がへんてこなのか。それとも、店内がへんてこな形をしているのか。はたまた、へんてこな店主がへんてこな商品を売り、へんてこな商売をしているのか……。
ツッコミどころ満載なその正体を確かめるため、だてらぼ編集部は仙台市青葉区一番町にある「へんてこ屋」へと向かった。
「へんてこ屋」へ行ってみた
へんてこ屋の住所は仙台市青葉区一番町1丁目11-34。地図で見ると、このあたりだ。
ここから100メートルほど歩いたところのT字路を左折する。
さらに100メートルほど歩くと、右手に「へんてこ屋」の看板が現われた。
ここの階段を登って、2階へ向かおう。
(コンコン)
筆者「ごめんください~」
「幽☆遊☆白書」の赤ちゃん飛影(等身大ぬいぐるみ)を抱いて出迎えてくれたのは、へんてこ屋のオーナー・美香(みか)さん。
取材前は「へんてこ屋」と聞いて癖の強い40〜50代くらいの男性オーナーをイメージしていたが、ほんわかとした癒やし系のオーラがにじみ出る、優しげな女性である。ほっ。美香さん、今日はよろしくお願いします!
思わず心が浮き立つ“へんてこ”な雑貨がいっぱい!
さて、へんてこ屋というからには、何がどうへんてこなのかがもっとも気になるところ。ということでまずは、店内に所狭しと飾られた雑貨類を眺めることに。
店内には個性的な雑貨がたくさん並べてあって、見ているだけで楽しい。雑貨類はオーナーの美香さんがもともとコレクションしていたもので、すべて自宅から持ち込んだそう。
まずは、へんてこ屋が何屋なのか確認してみると、「何屋といえばいいのか自分でもわからないのですが、一応『文庫喫茶バー』をメインとして営業しています」と美香さん。
「普段あまり手に取らないようなタイトルや、気になってもなかなか買うことのないような本が揃っています。そういう本を、お茶やお酒を飲みながら眺めていただくのがメインのお店ですね」
確かに雑貨や本は、ほかのお店ではあまり見ないへんてこ感のあるラインナップ。「文庫喫茶バー」がメインということだが、ドリンクや軽食などもへんてこなメニューで構成されているのだろうか。
紅茶やお酒、軽食は正統派なおいしさ!
さっそくへんてこ屋のメニューについて聞くと、「メインはドリンクで、紅茶やお酒を扱っています。フランスの紅茶専門店『CHA YUAN(チャユアン)」の紅茶や、ノンカフェインのフレーバーティーが人気です」とのこと。
メニューを見ていて筆者が気になったのは、「アブサン実験セット」。そもそもアブサンとはなんなのか、そしてどんな実験をするのだろうか。
「アブサンは、かつてヨーロッパで薬酒として流行したお酒です。ゴッホなどの画家が好みましたが、幻覚作用があって、販売禁止になったこともあります。これをわざわざ飲みに来られる人もいますよ」と美香さん。
どうやらアブサンが人気のお酒であることはわかった。しかし、「実験セット」とはいったい?
「アブサンは比較的クセの強いお酒で、通常は水で割って飲みます。それでも飲みにくい人向けに、ビーカーに入れたグレープフルーツジュースを一緒にお出ししているんです。水で割ったりジュースを足したり、自分に合う味をいろいろ試してもらうように、という意味で『実験セット』としています」
雑貨だけでなく、ドリンクメニューにもところどころクセのある感じを注入しているようだ。
続いてフードメニューについて確認してみると、「ホットサンドや焼きバームクーヘンなどの軽食を、おつまみ的な感じで出しています。あとは、このビル1階の『門(mon)』さんのお弁当やお惣菜のみ店内への持ち込みをOKとしています。なので、門さんで買ったお惣菜を持ち込んで、ここでビールを頼んでゆっくりして行かれる人もいらっしゃいますよ」とのこと。
おいしい惣菜をつまみにビールを飲むなんて、最高の過ごし方ではないか。リーズナブルに飲めるのもポイント高しである。
とくに人気のメニューを聞いてみると、「CHA YUANの紅茶は、香りがすごく良いので人気ですね。あとは焼きバームクーヘンを頼まれる女性が多いです」と美香さん。
というわけで、人気のCHA YUANの紅茶「コンポジション ドゥ シエル(600円・税込/以下、同)」と「焼きバームクーヘン(500円)」を注文してみた。ちなみに、セット注文で100円割引になるのでセットがお得だ。
どうやら人気メニューに「へんてこ」感はない……などと思っていると、おや、これは……?
(クセが強い。けど、かわいい……)
紅茶からはこっくりと甘くて良い香りが立ち上り、焼き立てバームクーヘンはカリふわ、添えられたバニラアイスクリームは舌の上でほどけるように溶けてゆく。
取材できたことを一瞬忘れるような、そんな極上のひと時を過ごしてしまった。雑貨や一部のメニューにややへんてこ感はあるが、それがまた良し!
雑貨販売スペースでは、さまざまな作家の作品が購入できる
店内では雑貨の販売も行っていて、「今は9人の個人の作家さんと、卸メーカーさんと契約していて、仙台ではあまり扱っていないような商品を手に取って見ていただけます」。
仙台で活動している作家とも取引があり、「もっと仙台の作家さんの作品を多く扱いたいですね。委託販売もできますので、ぜひお声がけいただきたいです」と美香さん。
美香さんのいうように、仙台のほかのお店ではあまり見ない品揃え。雑貨を仕入れるときのこだわりについて聞いてみると、「自分がほしいものですね。自分が『いいな』と思ったり、『こういうアイデアは思いつかないな』と感じたりした作品を扱うようにしています。あとは、デッドストック品などの古物の販売もしています」とのこと。
へんてこ屋はカフェでもあり雑貨店でもあるが、雑貨だけ見に来て注文せずに帰るのも問題ないそう。
「雑貨スペースだけ見にきて帰る人もいらっしゃいます。本を読む場合はカフェ・バースペースのご利用になりますので、注文していただく必要があります」
「へんてこ屋」というインパクト大な店名の由来は……?
2019(平成31)年の3月にオープンし、ちょうど1年が経った「へんてこ屋」。ずっと気になっていた「へんてこ屋」のネーミングの由来を聞いてみた。
「頭にぱっと浮かんだんですよね。思いつきです。昔から、自分が好きなものがあまり一般受けしない『へんてこなもの』だという自覚があったので、じゃあへんてこ屋でいいじゃないかと」
お店をオープンしようと思ったきっかけについては、「もともとは普通の会社員をしていたのですが、昔からちょっと変わった本や雑貨類が好きで。ぼんやりとですが、『お店ができたらいいなあ』という思いはありました。現実的に考えるようになったのは、ここの空き物件を見つけたのがきっかけです」と美香さん。
「でもお金がなかったので、節約のために内装はほとんど自分でDIYしました。棚を作ったり壁を塗ったりして、初期費用を抑えたんですよ」
内装は決してへんてこではなく、むしろちょっとおしゃれな喫茶店といった感じ。どういうお客が多いのだろうか。
「老若男女を問わず、幅広い年代の人がいらっしゃいます。比較的女性が多いですが、そこまで偏りはありません。お友達同士で来る人もいますが、少ないですね。ひとりで来店して、ゆっくり本を読んだり私と話をしたりしていかれるお客さまが多いです」
これまた取材前のイメージでは、40〜50代くらいの男性が多いと思っていたので、意外といえば意外である。
「そうなんです。オープンする前はそれくらいの世代が多いかなと予想していました。いわゆる『ノストラダムス世代』ですね。それくらいの世代だと、ミステリー系の雑貨類はなつかしいと感じますから。でも実際には、大学生くらいの若い人も多くて。若い人にとっては物珍しく新鮮なようで、それがかえっておもしろく感じるみたいです」
ちなみに、お客の滞在時間については平均2~3時間で、なかには、オープンの13時から閉店の21時までずっといた人も。
「そのうちのひとりは、仕事の打ち合わせに使われたんですが、お相手が帰ってからもひとり残って、私と話をしていました。で、いつの間にか夜になっていたと……」
イスが横並びで、コンセントも使えることから、仕事の打ち合わせやパソコン作業で利用する人もいるようだ。
毎週水曜日にはカラーセラピーを実施
へんてこ屋では、Sloth room(スロースルーム)という名前でカラーセラピーもしていて、基本的に毎週水曜日、予約制で行っている。水曜日以外でも、へんてこ屋の営業時間外なら相談に乗るとのこと。
「カフェメニューのほうでお試しでやっているのが1500円で、Sloth roomのほうは20分2500円、50分3800円です。ご自身で色を選んでいただくことで今の自分を見つめ直したり、人と話すことで気持ちを軽くしたりできます」
セラピーとしてはリーズナブルでトライしやすい値段設定。気になる人はぜひ!
へんてこ屋のカフェ・バースペースにはギャラリースペースもあり、ここで絵や作品の展示も行っている。
「ご希望の人には無料で貸し出しているので、お声がけいただければ。あと、変わった雑貨が多いので撮影用に利用される人もいますよ」
仙台一番町にある「へんてこ屋」は、へんてこなもの好きなオーナーが営むちょっと変わった文庫喫茶バーだった。たしかにクセのある雑貨も多く展示・販売されているが、どれもかわいくて興味深いものばかり。
おいしい紅茶やお酒をいただきながら、ゆったりと思いおもいの時間を過ごせる素敵なお店なので、我こそは! というへんてこ好きなあなたは、(コロナが収束したら)足を運んでみてはいかがだろうか。
・住所:宮城県仙台市青葉区一番町1丁目11-34 三浦輪業商会ビル202号室
・営業時間:13時00分~21時00分
・定休日:火曜、水曜予約営業+不定休日
※新型コロナウイルス拡大防止のため、営業時間や定休日に変更が生じる場合があります
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この記事を書いた人
岩崎尚美
仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!