創業71年!「ほそやのサンド」のハンバーガーが仙台民から愛される秘密とは?

2021.09.30

ハンバーガー発祥の地

1950(昭和25)年創業の老舗ハンバーガー店「ほそやのサンド」。現存する最古のハンバーガー店として、数多くのメディアにも登場する人気のお店だ。看板商品のハンバーガーは、創業以来、販売総数129万個を数え、1日平均50食以上食べられている。

年配の夫婦、テイクアウトで買いにきたであろう会社員風の人、幼い子どもを連れた夫婦、学生風の女子2人組など……。お昼時に店を訪れると、さまざまなお客がおいしそうにハンバーガーをほおばる姿が印象的だった。

なぜこんなにも幅広い年代に70年以上も愛されているのだろうか。看板メニュー「ハンバーガー」のおいしさの秘密と、これまでの軌跡について、2代目でチーフの細谷正弘さんを取材した。

“変わらぬ味で50余年”のハンバーガー

ほそやのサンドは、東北一の歓楽街として知られる国分町にある。

ほそやのサンドのアクセス

虎屋横丁入り口。くだものの店「いたがき」を横に入る

一番町四丁目商店街(アーケード)から、虎屋横丁に入ってそのまままっすぐ進む。2~3分ほど歩くと、右側にレトロなお店が見える。それが、「ほそやのサンド」だ。

ハンバーガー発祥の地

店の前に何やら怪しげな人形が……

ほそやのサンドのマスコットキャラクター

ダンディー君

店の前には、コック服姿の男の子の人形が置かれている。彼の名前はダンディー君。長きにわたり、店先でたくさんのお客を迎えてきた。

店内にはカウンター席が12席と、テイクアウト客用の長椅子がある。

仙台の人気ハンバーガー店の店内

シェードランプが店内を優しく照らす

仙台の老舗ハンバーガー屋さんの内観

ショーケースの下にはレトロな雰囲気の看板が

カウンターに座り、ハンバーガー(350円/税込、以下同)とアイスコーヒー(400円)を注文。この手頃な値段設定も、「ほそやのサンド」が愛される理由のひとつなのだろう。

まだかまだかと待っていると、厨房から「じゅーじゅー」と食欲をそそる音が聞こえてくる。少し腰を浮かせて厨房に目をやると、パティを焼いている姿が見える。ハンバーガー1個350円という安さながら、オーダーを受けてから調理するのも「ほそやのサンド」にファンが多いゆえんである。

ほそやのサンドの人気メニュー

ハンバーガーとアイスコーヒー

待つことおよそ5分。オーダーしたハンバーガーとコーヒーが運ばれてきた。

作りたての温かいハンバーガーを口にすると、しっとりとしたバンズにふっくらジューシーなパティ、甘いケチャップソースが絶妙に絡む。そして、薄切りの一切れの玉ねぎの少しの辛みがアクセントとなって、全体の味を引き上げてくれる。

香り高いコーヒーとの相性も抜群で、取材ということを忘れ、無我夢中で完食しまうほどのおいしさ。この秘密をじっくりと探っていく。

ほそやのサンドのハンバーガーのおいしさの秘密に迫る!

半世紀以上にわたる長い間、親しまれ、愛されてきた「ほそやのサンド」のハンバーガーは一体どのようなこだわりが詰まっているのか、細谷さんに話を聞いた。

ほそやのサンドの人気のハンバーガー

──驚いたのが、オーダーを受けてからパディを焼いていることでした。注文が立て込んでいる時も焼き立てを出しているのですか。

細谷チーフ
細谷チーフ
そうですね。創業時からそのようにしているようです。開店前にその日出す分のパティをあらかじめ成形しておき、すぐ焼けるように準備しています。1個のパティを焼くのには、4~6分かかります。混んでいる時は高温でさっと焼く、比較的すいている時は低温でじっくり焼くなど、状況を見極めて焼き方を変えています。

──忙しい時でも、その都度焼くのは大変そうな印象があるのですが……。

細谷チーフ
細谷チーフ
“作りたて・焼き立て・出来立て”が一番おいしいですからね。テイクアウトのハンバーガーを食べたお客さんが店に食べに来て、「やっぱり焼き立てが一番美味しいですね」と言われることもあります。
国分町にあるほそやのサンドのメニュー表

メニュー表には店のモットーでもある「ハヤイ、んまい、やすい」の文字が

──お肉がとってもジューシーで印象的だったのですが、どのようなお肉を使っているのですか。

細谷チーフ
細谷チーフ
牛と豚の合いびき肉を使う店が多いのですが、当店は牛100パーセントのお肉を使っています。1950(昭和25)年の創業前、初代がアメリカ軍の下士官(かしかん)クラブ(米軍の階級・下士官専用の福利厚生施設。食事ができるダイニングルームなどがあった)でマネージャーをしており、そこで食べたハンバーガーは牛肉を使っていたことから、創業からずっと牛100パーセントにこだわっています。

──なるほど、牛肉は豚肉と比べると濃厚でしっかりした味わいなので、あんなにジューシーだったんですね。甘めのソースもアクセントになっておいしかったです。

細谷チーフ
細谷チーフ
具体的にはお伝えできませんが、トマトケチャップベースに、何種類かの調味料を合わせたほそやのサンドオリジナルのソースです。以前お客さんに「ピリ辛の調味料をつかっているのでは?」と聞かれたことがありますが、辛いものは使っていません。
ほそやのサンドのドリンクメニュー表

ハンバーガーにはコーヒーやコーラがおすすめだそう

──企業秘密ということですね。バンズはふわふわ系ではなく、しっかりとした生地感が特徴だと感じました。

細谷チーフ
細谷チーフ
そうですね。パンの製造業者に、ほそやのサンド独自のレシピを渡して作ってもらっている特注品です。特徴はトマトケチャップベースのソースに合うように、少し甘めの味にしています。

──こんなにも手間がかけられているのに、ハンバーガーが1個350円。ファストフード店と変わらない安さですね。

細谷チーフ
細谷チーフ
特に首都圏からのお客さんには「安い」と驚かれることが多いです。確かに原価率は高めですが、利益を減らしてでもお客さんに美味しいものを食べてもらいたいですからね。創業当時はハンバーガーを1個30~40円ほどで販売していて中華そばと同じ値段でした。今はラーメン1杯の値段よりずっと安くなってしまいましたね(笑)。
ほそやのサンドの店主

窓際でハンバーガーを焼いている

──店のモットーでもある「ハヤイ、んまい、やすい」を実感しました。ハンバーガー以外の人気メニューも教えてください。

細谷チーフ
細谷チーフ
チーズバーガー(380円)、ホットドッグ(350円)、サンドイッチ(350円~)が人気ですね。あと、ステーキサンドイッチ(1000円)は、仙台黒毛和牛のステーキが挟まれている自慢の一品です。
細谷のサンドの人気メニュー

ドリンクメニューではコーヒーが人気。店のオリジナルブレンド

「ほそやのサンド」の過去、現在、未来

──今年(2021年)で創業71年目と伺いましたが、どのような道のりをたどってきたのでしょうか

細谷チーフ
細谷チーフ
1950(昭和25)年に創業者が山形県の神町(現在の東根市)で開業しました。当時、神町には米軍キャンプがあり、創業者は得意の英語を活かして下士官クラブのマネージャーとして働いていたことが縁です。その後、1953(昭和28)年に仙台・国分町に出店し現在に至ります。

──“日本最古のハンバーガー店”と聞いています。

細谷チーフ
細谷チーフ
実は少し違っていまして……。同じ時期に創業したハンバーガー店がいくつかあるんですが、今残っているハンバーガー店のなかで一番長いのが当店なんです。厳密にいうと“日本最古”というわけではないんですね。

──「現存する最古のハンバーガー店」ということですね。お店の造りもすごく素敵で、レトロな雰囲気に落ち着きを感じます。今の建物になったのはいつ頃なのでしょうか。

細谷チーフ
細谷チーフ
店は、55年前に作りかえています。ちなみに店の前にある人形、ダンディー君も建て替えと同じくらいに置いています。実は当初は顔が白かったんですよ。
ほそやのサンドの店の前にある人形

時とともにダンディー君の色も変化

──それだけ長い間、お店の前でたくさんのお客さんを迎えてきたのですね。お客さんは年代、性別などどのような方が多いのでしょうか。

細谷チーフ
細谷チーフ
うーん、いちがいには言えず、老若男女さまざまな方にお越しいただいています。比較的、平日のお昼時はお仕事をしている方が多く、土日祝日だと年配の方や、親子連れが多いですね。嬉しいことに、お客さんがお子さんやお孫さんを連れて来てくれることもあるんですよ。

──世代を超えて愛されていることがうかがえるエピソードですね。最後に今後の展開や、目標について教えてください。

細谷チーフ
細谷チーフ
現在、3代目と店をやっています。「創業100年」を目指し、これからも美味しい商品を提供していきたいと思います。

71年もの間、愛され続けるほそやのサンドのハンバーガー。どこか素朴で、でもこだわりがふんだんに詰まったその味に、仙台市民はもちろん多くの人が虜になっている。まだ行ったことがない人はぜひ一度、その味を堪能しに足を運んでほしい。

\この記事も読まれてます/

『ほそやのサンド』
・住所:仙台市青葉区国分町2丁目10-7 大内ビル1階
・TEL:022-223-9228
・営業時間:(平日)11時30分~22時30分(土日祝)11時30分~20時 ※なくなり次第終了
・定休日:なし(盆と正月は休み)

この記事を書いた人

鈴木千絵

鈴木千絵

仙台育ち・在住。「書く」ことがライフワークと思っている、会社員です。趣味は旅行やドライブです。大好きな仙台の魅力的なスポットを深堀りし、発信していきたいです。

関連記事