後編・仙台牛としてこの世に生を受ける子牛はいないって本当!?その真相を徹底調査
国内トップレベルのブランド牛である「仙台牛」。
しかし、仙台市民でありながら仙台牛を食べたことがない人はもちろん、「仙台牛としてこの世に生を受ける子牛はいない」という事実を知らない人が多い。
前編では遠田郡にあるみやぎ総合家畜市場を取材し、仙台牛になるための子牛のセリの様子をレポートした。
後編となる今回は、子牛をセリで落札した肥育農家のその後を取材。子牛の肥育(食用にするために肉量を増やすこと)の様子や、いかに宮城県が良質な牛を育てるのに適しているのか——その実態を解明していく。
仙台牛の肥育農家の元へレッツゴー
やってきたのは、仙台駅から45キロほど離れた場所にあるJR「小牛田駅」。そして、小牛田駅から歩くこと20分、JA古川に所属する千葉孝幸(ちば・たかゆき)さんの牛舎に到着した。
——千葉さんは42歳とお聞きしています。お若い方でびっくりしました! おひとりでやってらっしゃるんですか?
——さっそく、牛舎の中を見せていただいてもいいですか?
——何頭くらいの牛を肥育しているんですか?
——セリの時は、名簿を見て目星をつけたら実際に下見して入札する子牛を決めるんですよね。
良質な牛を育てるためにきれいな状態をキープ
前編では、子牛市場で子牛を落札して肥育をしても、5割程度しか仙台牛の称号を得られないことを伝えた。
そんななか、千葉さんが所属するJAグループ肉牛担い手組織の『仙台牛レボリューションズ』は、2020(令和2)年2月に行なわれた共進会で48頭中35頭が「A5」に格付けされ、仙台牛率は79.2%にも達した。
その35頭のなかでも、千葉さんが育てた牛が「チャンピオン賞」を受賞するなど高い評価を得ているのだ。千葉さんの牛舎では、いかにして良質な牛を育てているのだろう。
——牛って意外とデリケートなんですね。
地の利を生かした餌も必要不可欠
——餌は何を食べさせてるんですか?
——気候も大事な要素のひとつなんですね。稲わら以外には何を食べるんですか?
——お米も入ってるんですね。
——千葉さんからお話を聞いてると、牛たちへの愛情をひしひしと感じます。
——確かに、言葉が通じないので難しいですよね。
——行動で分かるものなんですね。
——気が抜けないですね。
手間暇かけて20ヶ月ほど肥育
こうして千葉さんのような肥育農家によって20ヶ月ほど育てられた牛は、食肉市場に出荷される。
その後、枝肉取引規格という日本全国共通の基準に基づいたランク付けでA5・B5と評価された食肉だけが「仙台牛」の称号を手に入れるのだ。
ちなみに、松坂牛や近江牛などのほかの有名ブランド牛は、「A4」や「A3」などでもブランド牛として認められている。そんななか、最高ランクの「A5」と「B5」に限定しているのは、ブランド牛のなかでも仙台牛だけ。
つまり、仙台牛が間違いなく国内トップレベルのブランド牛なのだ。
最後の第3回目は、仙台市内で仙台牛をリーズナブルに食べられるお店を紹介します。合わせてご覧ください!
この記事を書いた人
幸谷亮
仙台が大好きすぎて「だてらぼ」を立ち上げたひと。雑誌編集部→雑誌編集部→2016年に独立。雑誌編集部時代に身につけた取材力を武器に、みなさんの気になるネタを全容解明します。