【仙台】づんだ餅発祥の店・村上屋餅店|140年の歴史や、味へのこだわりを徹底取材

2021.09.04

村上屋餅店で一番人気メニュー

JR仙台駅から徒歩15分ほどの場所に、明治時代から営業し続けている餅店がある。その名も「づんだ餅発祥の店・村上屋餅店」。

140年以上にわたって営業する老舗ながら、今なお幅広い年齢層に愛されており、店の前に行列ができることも珍しくない。

今回は村上屋餅店を取材し、その歴史やづんだ餅のルーツ、こだわりなどを詳しく聞いてきた。

村上屋餅店へのアクセス

「村上屋餅店」の住所は仙台市青葉区北目町2-38。最寄り駅の仙台市地下鉄「五橋駅」からは徒歩10分ほどだが、JR仙台駅からも徒歩15分の距離にある。

JR仙台駅から徒歩で行く場合はあおば通や南町通を西へ進み、東二番丁通とぶつかったらそこから道なりに南へ。

村上屋餅店への仙台駅からのアクセス

左手にSS30、右手にウェスティンホテル仙台が立つ大通りを直進

仙台駅からのずんだ餅の人気店へのアクセス

仙台中央郵便局が見えたら、セブンイレブン北目町通店を右折し北目町通へ

地元民から人気のずんだ餅屋へのアクセス

突きあたりの丁字路(ローソン)を左折するとすぐそこだ

村上屋餅店の外観

「餅」の字が目印

今回は、村上屋餅店4代目店主・村上康雄(むらかみ・やすお)さんと一緒に店を切り盛りする、妹の村上紀子(むらかみ・のりこ)さんにお話を伺った。

創業明治10年!村上屋餅店のルーツ

仙台のおすすめのずんだ餅屋

村上屋餅店の歴史は古く、今から140年以上も前である。「村上屋餅店」として創業したのはなんと1877(明治10)年。さらに遡ると、村上家の初代にあたる村上孫左衛門と二代目の孫三郎は、江戸時代に仙台藩伊達家の御用菓子司であったそうだ。

今でこそ仙台市民のソウルフードともいえる「づんだ餅」だが、起こりは伊達氏が陣中の食糧にと畑の枝豆をつぶして餅と混ぜ合わせて食べたことと言われている。これを初めて商品化したのが村上屋餅店・三代目の精次郎だったことから、同店は「づんだ餅発祥の店」と呼ばれている。

ずんだ餅のルーツ

今の北目町に引っ越してきたのは1982(昭和57)年。以前は一番町に店舗があった

紀子さん
紀子さん
今は「ずんだ」と書かれることが多いですが、元は「づんだ」でした。旧仮名遣いなので、うちみたいに古くからやっているお店の何軒かは今も「づんだ」と表記しています。

「づんだ」の由来は諸説あるが、豆を打って作る「豆打(づだ)」がなまって「づんだ」になったのだという。

素朴でおいしい餅を提供し続けるためのこだわり

明治から続く老舗ながら、今なおたくさんのお客から愛され続ける村上屋餅店。こだわりについて伺った。

紀子さん
紀子さん
「づんだ餅」を食べにいらっしゃるお客さまが多いですが、うちはあくまで餅店ですから、まず餅へのこだわりが第一。づんだやくるみ、ごまなどの餡は、餅をおいしく召し上がっていただくためのエッセンスみたいなものです。

――お餅が主役ということですね。お餅にはどのようなこだわりが?

紀子さん
紀子さん
ブランド米「みやこがね」を使っています。白くなめらかでコシやねばりが強く、甘みのあるのが特徴ですね。先代はわかりませんが、4代目の村上康雄が店主になってからは、ずっとこのお米を使っています。
仙台のきなこ餅

店内では、みやこがねで作った切り餅も販売

店主自ら米を食べ歩き、これと決めた品種なのだそう。では、店の看板メニューである「づんだ」についてはどうだろうか。

紀子さん
紀子さん
づんだは、枝豆の薄皮まですべて水で揉みながら洗い流して作ります。そうすることで色や舌触りが良くなるんです。

枝豆の薄皮を取らない方が餡の量は増え、手間も圧倒的にかからない。しかも薄皮は一度に取りきれないので、何度も何度も繰り返し洗い流す必要があるそうだ。かといって長時間水に漬けておくと豆の味が抜けてしまうので、短時間でこなさねばならない。

このような手間をかけてこそ、見た目にも美しく、なめらかな口当たりの「づんだ餅」が完成するのだとか。

仙台駅近くで地元民から愛されるずんだ餅

手間暇かけて作られている

紀子さん
紀子さん
また、づんだに使う枝豆は国産のもの、と決めています。それ以外はとくに制限はしていなくて、そのときそのときで、出来のいいものを仕入れるようにしていますね。

――店づくりのコンセプトは、代々変わってきていますか?

紀子さん
紀子さん
そんな大層なものはないですよ(笑)。とにかくお餅を作って、素朴な味をお客さまに提供する。それはずっと変わらないです。ただ、先代からやらなかったのは、百貨店への出店ですね。目が行き届かなくなるので、お話をいただいてもお断りしてきました。

こうした考えから、餅の作りおきもしないのがポリシーだそう。一度にたくさんは作らず、なくなりそうになったらまた餅をついて、切る。これが昔から続く村上屋餅店のこだわりだ。

SNSが流行し始めてから若い世代のお客が急増

ずんだ餅をイートインできるスペース

店内にはテーブル席が3席(4人席がふたつ、2人席がひとつ)用意されており、イートインも可能。

有名人も通うずんだ餅専門店

壁には有名人のサインがずらり!

――休日にはかなりたくさんのお客さんが並んでいますよね。

紀子さん
紀子さん
はい。SNSで拡散されるようになったここ5~6年ほどは、休日を中心にたくさんのお客さまにご来店いただくようになりました。イートイン利用で並ばれるのは若いお客さまが多いですね。
テイクアウトできるずんだ餅店

イートインとテイクアウトで列を分ける看板が用意されている

紀子さんによると、以前は近隣に住む比較的年齢の高いお客の来店が多かったが、SNSが普及してからは若い世代が急激に増えたそう。

休日になると、小さな子どもを連れたファミリーや、学生など比較的若い年代のお客が店の前に列をなす。多い日には、1日に500人前以上の餅を作ることもあるそうだ。

イートインの一番人気は、いろいろ食べられる「三色餅」

村上屋餅店のメニュー

各席に置かれているイートインメニュー

イートインでは、3種類の餅をひとつずつ食べられる「三色餅(740円/税込、以下同)」が一番人気。これは20~30年ほど前に、「一度にいろいろな味の餅を食べたい」というお客のニーズを汲み取り、メニューとして誕生した。

村上屋餅店で一番人気メニュー

左からごま・づんだ・くるみ。箸休めのお新香がついている

紀子さん
紀子さん
例えばづんだ餅を1人前頼むと、もうそれだけでお腹いっぱいになって他の味が食べられませんよね。本当はごまもくるみも食べたいのに、という声が多かったんです。
村上屋餅店のイートインメニュー

単品の餅メニューには餅がみっつ入っており、そこそこボリュームがある

紀子さん
紀子さん
そこでこの「三色餅」を考案したところ、とくに女性に大人気で。このメニューが出てからは、イートインの利用がすごく増えました。

ところでこの三色餅、見本では「ごま・づんだ・くるみ」の三色構成だが、実は餅であれば変更が可能。づんだ・くるみ・ごま・つぶあん・こしあんの5種類があり、「づんだ、くるみ、こしあん」のように入れ替えてもよし、「づんだをふたつにごまをひとつ」と数を変えてもよしなのだ。

とはいえ悩んだ結果、見本通りの3種類を頼むお客が圧倒的に多いそう。筆者も、見本通りの三色餅を注文してみた。

村上屋餅店のごま餅

ごまの美しいツヤツヤ感!

村上屋餅店のおいしいくるみ餅

くるみもとろーりなめらか♪

仙台駅近くで地元民から愛されるずんだ餅

づんだは枝豆の自然な緑色が特徴

食べてみると、ごまとくるみは比較的甘め、づんだは甘さ控えめでその分枝豆の風味が生きている印象だ。どの餡もかなりとろりと柔らかく、餅とからめながら食べても多くが皿に残ってしまった。

紀子さん
紀子さん
餡が食べきれないのがもったいないというお声が多かったので、スプーンをつけています。甘いのがお好きな人は、餡をスプーンですくって最後まで召し上がっていただければと思います。

仙台のずんだ餅はおいしい

――なるほど、だからこそのスプーンだったのですね。

紀子さん
紀子さん
はい。基本的に製法や材料は昔から変わっていませんが、餡づくりを昔は手作業でやっていたのが今はミキサーに変わったので、よりなめらかになったかなと思います。

――それぞれの味の特徴を教えてください。

村上屋餅店の人気メニュー

紀子さん
紀子さん
ごまとくるみはちょっと甘めですね。お餅と合わせて食べるので、あまり甘さ控えめにしてしまうと甘いものが好きな人には物足りなくなってしまうかなと。それでも時代の流れで、昔よりはやや砂糖控えめになっています。

――たしかに、ごまとくるみは甘めですが、づんだはそこまで甘くないですね。

紀子さん
紀子さん
そうですね。本当は砂糖を多く入れたほうが持ちも、色も良くなるんです。うちのづんだは無添加なので、枝豆自体の色によってかなり色が変わってきちゃうんですね。でも他の餡が甘いので、バランスを取るためにづんだはあまり甘くしないように、砂糖をあまり入れずに作っています。
村上屋餅店のかき氷メニュー

夏限定でかき氷も販売している。販売期間は、涼しくなったら終わりだそう

「いちごミルク(630円)」や「宇治金時ミルク(810円)」といった定番メニューが売れ筋だそうだが、なかでも目を引くのが「づんだミルク(820円)」。いったいどのようなものなのか、頼んでみると……

仙台の人気かき氷

たっぷりの氷の上にこんもりとづんだ餡!

仙台のご当地かき氷

中にはたっぷりのミルク。下の方にもづんだ餡が入っている

紀子さん
紀子さん
かき氷用のづんだは、氷と混ざって味が薄まってしまうので、づんだ餅のづんだより少し甘めに作っています。軽い気持ちでお試しで作ってみたら結構おいしくて(笑)。今では夏の人気メニューのひとつになっていますね。

実際に食べてみると、思いのほかかき氷とづんだ餡がうまいことマッチングしている。シャリシャリとしたかき氷と、なめらかなづんだ餡との食感の違いが楽しめるのだ。それになんといっても食べごたえがあり、贅沢感を味わえる。

やや甘めに作られているという餡とたっぷり入ったミルクのおかげで、どこから食べてもしっかり甘くスイーツ感があるのも嬉しい。

テイクアウトでも一番人気はやっぱり「づんだ餅」

村上屋餅店のショーケース

ショーケースに並ぶテイクアウト用メニューもすべてイートイン可能。テイクアウトでも人気なのは圧倒的にづんだ餅だが、イートインと違って三色餅はラインナップしておらず、「3個入り1人前」からしか注文できない点に注意が必要だ。また、支払いは現金のみとなっている。

村上屋餅店のテイクアウトメニュー

テイクアウトの餅は3個単位で販売

仙台で人気のおはぎ

おはぎはひとつから注文可

基本的には通年で販売するメニューが多いが、笹の葉で水まんじゅうをくるんだ「笹のしづく」の一部は夏限定での販売となっている。

村上屋餅店の夏限定メニュー

左から夏限定の「みかん(220円)」と「マンゴー(200円)」

もっちりとした水まんじゅうの中に、みかんはごろっとまるごと、マンゴーも果肉が入っており、爽やかななかにも食べごたえがある。

ほんのりと笹の香りがするのも風流でグッド◎

暑い時期にかぶりつきたいお菓子といった印象で、手土産に持っていったらよろこばれそうだ。

また、11月から5月頃にかけて期間限定販売する「いちごミルク大福」は非常に人気があり、スタッフのなかにもファンが多いそう。中には大粒のいちごがまるっとひと粒入っており、いちごの周りには白あんと生クリームが。それをいちごのリキュールが入ったお餅でくるむのだそう。

見た目にもかわいらしく、お土産としても人気なメニューなので、時期がきたらぜひゲットしたい。

づんだ餅の由来

――今後のお店の展開などについては?

紀子さん
紀子さん
現在の店主には跡継ぎがいないので、おそらく今の代で終わりになると思います。店主ももうすぐ70歳になりますから、元気で作っていられるうちは営業する、という感じになるでしょうね。

140年以上続く老舗だけに閉店してしまうのは非常に残念……。今のうちに何度も足を運んでおきたい。

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『村上屋餅店』
・住所:仙台市青葉区北目町2-38
・TEL:022-222-6687
・営業時間:9時00分~18時00分(ラストオーダー17時45分)
・定休日:月曜日、火曜日
・最寄駅:仙台市地下鉄「五橋駅」

この記事を書いた人

岩崎尚美

岩崎尚美

仙台を拠点に活動するフリーライター。生まれも育ちもだいたい仙台です。仙台の魅力をお伝えするため、頑張ります!

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